ダンス

「ナミさん!」
「何?サンジくん」
「これが…」
aaaとサンジは恋人同士。
それなのに、ナミはaaa以上にサンジと仲が良い。
どうしてかは知らない。
前に付き合っていただとか、体の関係があったとか、そういうことを聞いてもサンジは違うと否定するばかりで、aaaは、ナミとサンジの関係を疑わざるを得ない状況下にある。

そんな中、不安を胸に抱えたまま寝ていたaaaは悪夢を見てしまった。
「はぁっ…、サンジくん……あっ!」
「ナミさん、綺麗だ…」
サンジとナミの見たくもないセックスシーン。
「…いやっ、いやぁ!」
「aaaちゃん!」
うなされていたaaaを、心配そうに見つめるサンジ。
「aaaちゃん、大丈夫かい?」
抱きしめようと伸ばしてきたサンジの手を、aaaは無意識に叩いてしまっていた。
「あ…、ごめん…」
aaaがサンジを見上げると、サンジの顔は怒りの表情に染まっていた。
「…そんなに、おれが信じられねぇのかよ!ナミさんとはなんにも関係がねぇって、何回言えばわかるんだ!!」
怒鳴るサンジの気迫がびりびりと伝わる。
それがaaaの脳内で怖いという感情に変わる。
「っ…!、なんで知ってるの…!」
「寝言でナミさんとかサンジくんとか言ってたからだよ!!」
「…それはっ、サンジくんが、ナミと仲が良いからじゃんか…!!」
目に涙をいっぱい溜めて、aaaは反論した。
「私は…っ!」

好きなのに、伝わらない。

涙が溢れそうになって、サンジの前で泣きたくなくてaaaはサンジの前から走ってゾロのもとに行った。

抱きしめたい、キスしたい、セックスしたい、触れ合いたい!!
愛してる、のに、なんで、こんな――。

「ゾロ…っ」
「また泣いてんのかよ」
トレーニングしているゾロを邪魔しないように、aaaは部屋の隅で泣いた。
「泣くな、気まずい」
「…うぅ、ひどい」
ぐい、と涙を拭いながら、aaaは立ち上がった。
「いい加減別れろよ、ケンカするたびにこっち来られるとめんどくせぇ」
「ごめん…。でも私、サンジくんのこと好きなの愛してるの。それなのに伝わらない…」
「てめぇもコックもアホだな」
はっ、と乾いた笑いをしたゾロ。
「私のことはいいけどサンジくんのことバカにしないで」
ダンベルを手に持ったゾロの腹をどす、と殴るaaa。
「うぐっ」
鳩尾を殴られたゾロの手からするりとダンベルが落ちて、地面に叩き付けられ、船を揺らした。
「もうっ、なに落っことしてんの!危ないな!」
「てめぇのせいだろ!」

ズシィンと地震のような揺れにルフィとウソップとチョッパーは笑っていたが、フランキーは船を壊す気かと怒っていた。
サンジは様子見ついでにaaaに謝ろうとトレーニングルームに向かった。
「言いすぎちまった」
後悔しているし、自分でも馬鹿だと思っている。
好きすぎて、嫌われたくない。
そんな想いからサンジはよくナミに相談していたのだけれど、それが悪かったようだ。
本当にナミとは何もないけれど、はたから見ればそうでもないのかもしれない――。
「aaaちゃん――」
サンジがトレーニングルームの扉を開いた。
「すごい、好き」
aaaがゾロにそう言った。
――そう、aaaとゾロの関係のように。
サンジは力任せに扉を閉めると、キッチンに向かっていった。

「サンジくんと仲直りしたい」
「したらいいじゃねぇか」
ダンベルを拾い上げ、またトレーニングを始めるゾロが言った。
「だって、また言い合いになって、ケンカしたらもう…無理な気がして…」
aaaはゾロを見上げた。
「すごい、好き…なのに」
バタン、と扉が閉まる音がして、aaaが扉に視線をやって、ゾロに視線を戻すと、ゾロは興味なさそうにスクワットをしていた。
「アホコック」
不思議そうな顔をするaaaにゾロが言った。
「…え?、うそ」
aaaは慌ててトレーニングルームから出ていくと、サンジがいるであろうキッチンに向かった。
「サンジく…!」
勢いよくキッチンの扉を開くと、キッチンにはサンジと、案の定ナミがいた。
「…aaaちゃん」
「aaa」

なんで、私じゃなくて。

「aaaちゃんはやっぱりマリモの方がいいんだろ!」
「違う…、違うよ!」
また怒鳴るサンジと、泣きそうになるaaa。
「サンジくん…」
サンジを宥めようと、サンジの体に触るナミ。

ああ、触らないで、私だって全然触れたことないのに。

トレーニングが終わったゾロがキッチンにやって来た。
「私はサンジくんのことが好きだよ!」
「じゃあなんでマリモとばっか話してんだよ!」
「aaa…、もうその辺でやめとけ」
ゾロがaaaの肩を叩いた。

私を気遣う人達が、私達の関係をこじらせていくんだ。
もういやだ、やだ、もう、やだ。

「やめてよ!!もう誰も何も言わないで!」
頭を抱えたaaaが叫んだ。
「お願い、もうやだ…」
はぁ、はぁ、と拙い息をして、aaaはよろよろと船尾に行ってしまった。

「こんなに好きなのに、なんで離れていくんだろ…」
aaaは船尾の床の板に寝そべりながら呟いた。
「海は青いなぁ…」
柵の間から海を見つめる。
涙が溢れて止まらないのを、もう、止めようとは思わない。
「サンジくん…好きだよう…、キスしたいなぁ…でもナミとキスした唇なんかでキスしたくない…」
汚いわけでもないのに、どこか恐ろしいのは、きっと、自分とナミを比べた時に、自分が劣ってしまうからなんだろう。
「したいなら、言えばいいだろ」
後ろから声がした。
振り返るまでもなく、声でわかる。
サンジだ。
「今はしたくない…」
「なんだそりゃ」
息を深く吐く音が聞こえたから、サンジはきっとたばこを吸っているんだろう。
「…何度言ったらaaaちゃんはわかってくれんの?」
「……さぁ、ね」
「……aaaちゃんは、おれとマリモ、どっちが好き?」
そんなの決まってる。
「サンジくん」
「…へぇ。嬉しい」
サンジが床板と革靴の触れる音をさせて近づいてくる。
「aaaちゃん…、おれはaaaちゃんに触りたいし、キスしたいしセックスしたい。それなのに触らせてくれねぇし、マリモとばっか喋ってるし、それって、おれとナミさんの関係みたいに、疑われても仕方ねぇんじゃねぇの?」
サンジがaaaの背後についた。
「…それって、自分は悪くないって言ってるの?」
「違ェよ、なんでそんな風に解釈すんだよ」
また、言い合いに、なる。
「私は愛してるのに、なんで…、え?」
「愛してるのにaaaちゃんは…、は?」
同時の発言に、aaaとサンジは固まった。
aaaが振り返って、サンジを見上げると、サンジは顔を真っ赤にしていた。
「…aaaちゃん、愛してる。クソ愛してる。バカやって嫌われたくねぇからナミさんに話してた…」
つられてaaaの顔が真っ赤になる。
「…私だってゾロにずっと相談してた。好きなのにサンジくん怒らせてばっかりだから…」
伝わる心と、ほぐれていく気持ち。
「同じ、だな」
「うん…」
サンジは膝をついてaaaを抱きしめた。

近付いて離れて、また近付いて、ダンスみたいに、踊る気持ち。



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