くだらない

※学パロ、名字使います

キーンコーンカーンコーンと授業終了のチャイムが鳴る。
「虎徹先生!」
「おー?どしたどした」
途端に生徒は教師の虎徹の周りを取り囲み、たわいもない話をしている。

なんてくだらない。

「先生、好きな色は?」
くだらない質問から。
「虎徹先生ってぇ、好きな人とかいるんですか?」
ありきたりな質問まで、様々な疑問を問い掛ける生徒に、虎徹は丁寧に答えていく。
「好きな色は緑だなー」
「ベスト緑ですもんね!」
つんつん、とベストを突っつく生徒。
教師にボディタッチ、と思いながら溜息を吐いたaaaはイスに座ったまま虎徹のモテっぷりを眺めていた。
「好きな人はなぁ、ほら俺結婚してるし」
「そっかー…あ、じゃあ、どのくらいまで恋愛対象ですかーっ?私たちも入っちゃう?」
虎徹は困った風に笑って、「どうかなぁ」と言った。
「生徒も範囲内ですか?さすが虎徹先生ー」
そんな生徒の言葉に、aaaはびくっと体を震わせた。

そうだったら、嬉しいけど、あるわけないし。

「…おっともうこんな時間じゃねーか。じゃーな!」
虎徹は足早に教室を出ていった。
「虎徹先生、やっぱかっこいいよねー!」
「あたしはバーナビー先生がいいなぁ」
きゃあきゃあと騒ぐ女子をくだらないと思いながら、次の授業の用意をした。

帰ろうとしてかばんを持って階段を下りていた時、出会ってしまった。
「おっ、aaaじゃねーか」
虎徹に。
「……鏑木先生」
「もう帰んのか?」
「はぁ…、そうですけど」
なんでか、うまく虎徹の顔が見れないaaa。
「前のテスト、結構よかったな!頑張ったんだな!」
明るく笑う虎徹の顔が見たいけれど、顔が上げられない。

なんで。

「別に、そんなわけじゃ…」
「虎徹先生さよーなら!大好きです、なんちゃって!」
大声で通りすぎたのは、授業終わりに虎徹と話していた女生徒だった。
aaaは声に驚いて、階段を下りていく様子を静かに見つめていた。
「おお」
苦笑いしながら、虎徹が女生徒に手を振った。
「…aaa、お前、おれのこと嫌いか?」
「…っ」
aaaは、虎徹を睨んだつもりだったけれど、虎徹は飄々としていて、なんとも思っていないようだった。

その感情がくだらない。

「嫌いだったら、なんなんです!」
「…悲しいだろ、フツーに」
後頭部を掻きながら笑う虎徹。
「……なぁ、嫌いか?」
「……どっちでも」
ないです、と呟いた。
「先生は…、どうですか」
「うん?」
「先生は、私のこと……好きですか」
ぽつり、と小さく言った。
虎徹はそれを聞いて、少し悩んでから、口を開いた。
「好きに決まってるだろ」
に、と笑った虎徹に、胸が高鳴り、顔が熱くなった。

その言葉の意味が、生徒の私じゃなくて、女としての私だったらいいのに、なんて――。

「そうですか」
aaaは会釈をすると、階段を下りていった。
泣きそうな顔が、見られないうちに。

「…なんて顔してんだ」
はぁ、と溜息を吐きながら、虎徹は両手で顔を覆った。
「こんなん許されねーよな…」
「好き」と言われた時のaaaの顔を思い出しながら、虎徹は踵を返した。

感情に振り回される自分がくだらなくて。



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