いつか君に

ずっとずっと夢にまで見たヒーローに、私は今日、なりました。

「すっ、スカイハイ、さん!」
トレーニングしているスカイハイもといキースに話しかけるaaa。
挨拶は昨日済ませていたので、顔合わせはこれで二回目だ。
「あぁ、aaaさんだね!」
にっこりと、爽やかな笑顔をキースはaaaに向ける。
「おはよう!ヒーローとして大変かもしれないけど、頑張ろう!そして、頑張ろう!!」
シャキーンとか、なんだか変な音が出るような、そんな親指を立てたポーズをしているキース。
「は、はいっ、迷惑をかけないよう、頑張ります!!」
ガッツポーズをしてみせると、キースがaaaの肩をぽんぽんと叩いた。
「力まないほうがやりやすいだろう」
キラリと歯を輝かせ、キースはトレーニングマシーンへと行ってしまった。
「aaa!」
「あ、ブルーローズさん!」
ドラゴンキッドのパオリンと、ブルーローズのカリーナが着替えを済ませてトレーニングルームにやってきていた。
「そんなよそよそしくしなくても…」
「あ、はい、カリーナさん…」
「ボクもパオリンでいいから!」
はいっ、と手を上げたパオリンが可愛いらしい。
「はい、パオリンちゃん」
aaaがパオリンの頭を撫でると、パオリンは恥ずかしそうにくすぐったそうに笑った。

「…あの、カリーナさん」
「カリーナでいいわよ」
「う、うん。カリーナ…」
トレーニングを休んでいる時間に、カリーナに声をかけたaaa。
「…あのね」
小さな声でaaaが言うものだから、カリーナは耳を近付けた。
「スカイハイさんって、恋人とかって、いるのかな?」
「ハァ!?」
aaaの突飛すぎる質問に、カリーナの口から間抜けな声が出てしまう。
そのせいで、虎徹やバーナビー、キースまでがaaaとカリーナを見ていた。
「どーしたー」
虎徹が心配してそう言ってくれたが、虎徹に事情を話すわけにもいかず、「なんでもない」とカリーナが言う側で、aaaは首を振った。
「何あんた、スカイハイに近付くためにヒーローになったの?」
疑いの眼差しを向けるカリーナに、aaaは慌てて修正した。
「ち、違うよ!私は、役立ちたいって思ったからヒーローになっただけで…っ!そりゃあ、スカイハイさんとお近付きになれるって思うと嬉しくてたまらなかったけど…」
勿論カリーナともね、と言うaaa。
カリーナは溜息を吐いて、「いないわよ」と言った。
「え?」
「いないわよ、スカイハイに恋人は」
「ほ、ほんと!?」
目を輝かせるaaa。
「…応援してるわ」
「ありがとう!カリーナも何かあったら言ってね!」
aaaはそう言って、トレーニングをしに戻っていった。

トレーニングが終わり、事件も事故も起こらず、平和だった一日の最後に、aaaは覚悟を決めてキースを声をかけた。
「あの、スカイハイさん!」
「…ん?どうしたんだい?」

「あのっ、私……スカイハイさんのこと好きなんです!」

一世一代の告白に胸が張り裂けそうになるのを抑え、かたく目をつむった。
「…ありがとう、そして、ありがとう!aaaさんみたいにファンがヒーローになってくれるのは嬉しいことだね!」
はは、と笑うキースに、aaaは固まった。
――通じていない。
「あ、あの、ですね、違うんです」
「いやあ、本当にいいことだ」
うんうん頷くキース。
「スカイハイさん!」
「…なんだい?」
「……違います。私がスカイハイさんが好きっていうのは、そういうわけじゃなくて、……違うんです」
気持ちが伝わらなくてなのか、よくわからない涙が目に溜まってくる。
「aaaさん…」
キースがそれに気付き、しゃがんでaaaの目尻を親指で拭った。
「キースさんが、好きなんです…」
「……ありがとう」
いつもの様な連続した言葉はなく、その変わりに、キースはaaaを抱きしめた。

「送っていくよ」
「いっ、いいです、そんな!」
「私が送っていきたいんだ」
真っ暗な空の下、青ジャケットを着た「キース」に微笑まれ、aaaは照れ隠しに笑い返した。
「じゃあ…」
一緒に歩き出し、aaaにとっては何分も経たずに、家に着いてしまった気分だった。
「…aaaさん、私はまだaaaさんのことをあまり知らないからなんとも言えないけれど、君を好きになりたいと思ったよ」
玄関先で、キースがそう言った。
「なんと言うのかな、笑う顔が、とても可愛らしいね」
顔が赤いキースが、可愛くてしょうがなくて、aaaはニヤける顔を隠すため俯いた。
「……ありがとうございます」
「それじゃあ、私はこれから用事があるから…」
「あ、はい!」
手を振ったキースの笑顔は、いつもと変わらない綺麗な笑顔だった。
「き、キースさん!好きです、から!!…おやすみなさい!」
「おやすみ」
ジャケットのポケットに入っていた手をわざわざ抜いて、また振ってくれたキースに、また、恋心を奪われ――。

いつか君に愛されるために、愛を叫んだ。




prev next

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -