ヒゲ剃りは忘れないでね

※学パロ


「ゾロ、おはよう!trick or treat!」
「あぁ?」
お隣りさんで同じ高校に通うゾロに、私は玄関を出たところで手を突き出した。

「あー…ハロウィンか、今日だったか?」
「今日だよ!ほらーおかしー」
ゾロのかばんを勝手に漁っていると、かばんを取り上げられた。
「ねぇよ」
ぺしん、とaaaの頭を叩くと、ゾロは歩き出した。
「じゃあ、いたずら、するよ?」
「してみろ」
「じゃあねー…」
aaaは自分のかばんをがさごそと漁り、取り出したものは、先週サンジがaaaの家に忘れていったヒゲ剃りだった。
「頭を丸めます!」
「おい、それはいたずらの域を越えてるだろ!」
ヒゲ剃りの電源を入れて襲い掛かるaaaの両手を掴み、取っ組み合いをするゾロ。
「いたずらはいたずらだよ!」
aaaは手を出来るだけ伸ばして、ゾロの髪をヒゲ剃りで剃ろうとする。
「止めやが、れッ!」
ヒゲ剃りを取り上げ、ゾロは先を急いだ。
「あー!!もう!じゃあ、おかしちょうだいよう。ていうかそれ、サンジのだよー」
早歩きをしているくらいの歩行速度のゾロを追いながら、aaaはゾロの持つヒゲ剃りを取り返した。
「てめぇが悪ぃんだろが」
バン、と背中を叩かれ、ゾロに怒鳴っていると、目の前の横断歩道に、見知った金髪がいた。
「サンジくん!」
aaaが手を振ると、サンジはたばこを指に挟んだまま手を振った。
「aaaちゃん、おはよう」
携帯灰皿にたばこを押し付けた。
どきり、と胸を高鳴らせながら、aaaは精一杯の笑みを浮かべて挨拶をした。

歩き出し、学校に向かう三人。
今日はなんだか知らない、しかも人気があまりないところを通っている。
「サンジくん、これ」
「あぁ、やっぱり置き忘れてたんだ?ないと思ったら…」
aaaがヒゲ剃りを渡すと、サンジがありがとうと言った。
「あのさ、サンジくん…」
「そういえば、今日ってハロウィンだったな。aaaちゃん」
「え、うん!」
先に言われ、どうしようと考えていると、サンジがaaaの顔を覗き込んだ。
「trick or treat」
耳元で囁かれ、びくりと体が震えた。
顔を真っ赤にしながら、aaaはサンジにあげるために作っておいたクッキーを渡そうと、かばんを漁る。
けれどなかなか見付からず、奮闘していると、急にがしりとサンジに肩を掴まれた。
「あ、あの、サンジくん…?」
「いたずら、していい?」
金髪を揺らしていやらしく笑ったサンジは、どこか色っぽく、しかし男だった。
「待って、あのね、クッキー作ってきて…ん!」
aaaの言葉を阻むようにキスをしたサンジ。
ぺろりとaaaの舌を舐め、唇を離した。
「aaaちゃん」
「…サンジくん、朝だから!早く学校行かなきゃ遅れるし…!」
「…今イイ雰囲気だったじゃねぇかよ」
ふくう、と頬を膨らませたサンジをかわいいと思いつつも、aaaは学校があるだろう方向を見た。
「仕方ないじゃん…」
口ごもるaaaに、サンジは目を細めた。
「aaaちゃん、今日、泊まっていい?」
「えっと……うん」
「そん時、また言うから」
trick or treatって、とサンジはaaaの手を握り、学校へと足を進めながら言った。

「サンジくん」
「うん?」
きゅう、と私が握ると握り返してくれるサンジくんが優しくて好き。
「ヒゲ剃りは忘れないでね」


〇おまけ
「あ?あいつらどこ行った?…また迷子になりやがって、何回目だ」
呆れ返るゾロは、自分が迷子になっているということなど、思ってもいなかった。




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