越境

「aaa、久しぶり」
恋人同士であるにも関わらず、aaaと虎徹が合うのは二週間ぶりだった。
遠距離恋愛でもないのにこんなにも会えないのは、虎徹がNEXTでありヒーローだったからだ。
「いつもごめんな、ほんと」
「…いいよ、だって、仕方ないもん」
ヒーローに休みはない。
土曜日でも、日曜日でも、祝日でも事故は起こるし事件は起きる。
そんな中で働くヒーローは、大変だ。
それでも「やりがいがある」と言う虎徹は、とても物好きだと思う。
「aaa、ほんと、ごめん」
ぽふ、とaaaの頭を撫でた虎徹。
遠慮がちに笑う虎徹をちらりと見て、aaaは照れて俯いた。
「…謝らないで」
「お、おう」

ダイニングテーブルに向かい合うように座ったaaaと虎徹。
リビングで久しぶりに過ごす二人の空気は少し重い。
「……虎徹」
「ん?」
虎徹はテーブルに肘をついてaaaを見た。
「…キス、して」
「ん、」
テーブルに手をついて虎徹は身を乗り出し、aaaと唇を重ねた。
唇が触れ合うだけの、軽いキス。
会うのは二週間ぶり、キスは、一ヶ月ぶり。
それなのに、キスはこんなにも一瞬で終わってしまう。
「……虎徹、」
物欲しそうな目で虎徹を見るaaa。
「子どもはこれでオシマイな」
へら、と笑った虎徹に、aaaの胸が痛んだ。
(…したくないのかな、続き)
ディープキスも、セックスも、まだしたことがない。
「…なんで、」
声色重く、aaaが呟いた。
「え?」
小さな囁きを聞き逃さなかった虎徹は少し驚いた風だ。
「なんで?」
「…何が?」
虎徹はわけがわからない、というような顔をして、aaaを窺った。
「バカ!虎徹のバカ!なんで、なんでなの…」
立ち上がり、虎徹に向かって叫んだaaaは、唇を噛み締めて目を潤ませた。
「…な、なんで泣くんだよ!aaa!」
虎徹がaaaに近寄り、目を擦るaaaの手を掴む。
「やだっ、触らないで!」
びし、と手を振り払うaaa。
「!、…aaa、そんなこと言われても俺触っちゃうからなー」
虎徹はaaaの言葉を無視し、aaaに近寄り抱きしめた。
「やだー…っ」
ぐいぐいと押し付けられる胸をaaaは力いっぱい押して抵抗するけれど、虎徹には効いておらず、力強く抱きすくめられるのをただ無言で迎え入れることしか出来なかった。
「そんなこと言われたらヘコむだろ。…何が不満なんだよ。言わねぇとわかんねぇだろ。ほら、言ってみろ」
ぽんぽん、と撫でられた背中。
「うー…」
ぽろぽろと不可抗力の涙が零れて、虎徹のシャツを濡らしてしまう。
「虎徹ぅ…」
「んー?どした?」
虎徹がaaaの額にキスをすると、なぜか涙が引っ込んだ。
「……」
言おうか言わまいか悩んで、aaaは覚悟を決めた。

「……えっちしよ」
「はっ!?」

しばしの沈黙が二人を襲う。
その頃虎徹は、aaaの言ったセリフの意味を、脳内検索していた。
「…えっとだなぁ、それってよ、もしかして……セックスしたいってことだよな?」
戸惑いながら言った虎徹。
aaaは自分で言ったくせに恥ずかしくなってしまい、赤くなった顔で頷いた。
「…いいのか?」
「……え?」
「…aaaはまだ高校生だろ。こんなオジサンとしちゃっていいのか?」
虎徹が真面目な顔でaaaに問う。
「私は、もっと虎徹のことが知りたいよ…」
aaaは虎徹の背中に手を回した。
「……aaa、愛してる。イヤになったら言えよ」
虎徹はaaaを姫抱きにして、寝室に向かった。




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