ひとみの中に夢を残して

※学パロ、名字使います


職員室の、角の席に座っている、サンジ先生。
「あの、先生」
「うん?どこかわかんないとこあった?」
教師の立場であるサンジが、aaaに尋ねた。

「あの、……ここ、わかんなくて…」
「あー…、ここね。難しいもんね」
外してデスクに置いてあった眼鏡をかけ、差し出された教科書を受け取った。
シャーペンを持ち、公式が解説されているところに数字を書き込む。
「ここはね、こうなんだよ」
「…あ、あぁはい」
じっと教科書を見つめるaaaを窺いながら説明していく。
「ここ難しいよね。おれも学生んとき全然出来なかったなぁ」
ふ、と笑いながらサンジが言うと、aaaがくすりと笑った。
「…あ、笑ったな?」
「だって……先生でも解けない問題とかあるんですね」
「天才じゃないからね。地道に頑張ったよ」
昔の思い出を辿っていく。
「……先生に解けない問題なんか出来ませんよ」
aaaが溜息を吐いて呟いた。
「…出来るようにおれも頑張るから、ね?」
「…はは、頑張ってください」
「aaaも頑張れよ!」
aaaはサンジの言葉に困ったような笑みを浮かべていた。

「aaaは、どこの大学に行くの?」
サンジが教科書を閉じて言った。
問題は、解き終わっていた。
「……まだ」
ふるふると首を横に振ったaaa。
「そっか。おれも、高校生だった頃は、大学なんかどこでもよかったし、就職も、何も考えてなくて、本当、先生やってるの不思議なくらいだよ」
サンジの座るイスがギシ、と音を立てて軋んだ。
「……先生にも、そんなことがあったんですね」
aaaの視線が、サンジのデスクのパソコンに移った。
「ま…、だいたいがそういうもんじゃねぇかな」
サンジがそう言うと、aaaはサンジに視線を戻した。
「…そうですか」
aaaの顔は、不安を映していた。

「忘れてたー…」
ぱたぱたと職員室に走るaaa。
元々サンジに用があったのは、aaaは問題を解き方を教えてもらいにではなく、提出物を届けにいくためだった。
しかし、本来の用事を忘れて、ついでの用事の問題の解き方だけを教えてもらっていた。
「…馬鹿だと思われたよ絶対ー」
大きく溜息を吐いてaaaは職員室の扉を開けると、放課後だからか、教師は誰ひとりとしていなかった。
(あれ?、いないのかな。……これ今日までなのに)
きょろきょろと辺りを見回し、サンジのデスクにたどり着いた。
(……あ)
そこで、サンジはパソコンに向かっていた。
(…この棚で隠れてたのか)
サンジのデスクに置いてある棚が、サンジの姿を隠していたようで、見えなかったのだ。
「ん、あれ?、aaa、どうしたの。またわかんないとこあった?」
どれ、とパソコンからaaaに目を移す。
「…これ」
ノートをサンジに差し出した。
「あぁ、はい」
サンジはそれを受け取ると、デスクに置いた。
「誰もいないんですね…」
「補習とか自主講座とか、あとは部活とかで先生は忙しいみたいだよ」
おれはなんもしてないけど、とサンジは言った。
「……先生」
「うん?」
aaaが、サンジを見据えた。
「私は、したいことないです。でも、好きな人はいます……」
「…うん」
aaaの瞳がきらきらと光っていく。
「……先生、私は」
「せんせー!これ教えてー」
後ろから大きな声をして、aaaはハッとした。
「はいはい」
サンジは微笑みながら、aaaの時と同じように、教科書を受け取って問題の解き方を教え始めた。
「ごめんな、aaa」
サンジは悪びれたふうなくそう言って、生徒に視線を移した。

本当は嘘だ。
したいことがないなんて。
小説家になりたいだとか、そんなありふれた夢もある。
けれど、それよりも好きなのは、サンジ先生、先生なんです――。

ひとみの中に、夢を、残して。
あなたを選びたい。



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