運命は交差している | ナノ
03

「肉じゃが、毎日食べてぇくらい」
もしかして、プロポーズですか。
「あの、その、…」
「……ほんとうめぇから、自信持って!すぐに作れるようになるって」
「あ、はい」
あれ?、違ったみたい。

七月上旬、もうすぐテストがある時期に、サークルがあるという情報が入った。
「……よしっ」
ガラ、と調理室の扉を開けると、キャーという黄色い歓声が聞こえた。
今日も王子様が料理を作っているようだ。
「あ、aaaちゃん」
「ど、どうも」
ぺこ、と頭を下げて、空いているイスに座った。
じゃっ、とフライパンをかえしたサンジ。
歓声が沸き起こった。
「サンジ先輩、すごいです!!かっこいい!」
「さっすがサンジー」
きゃあきゃあと話し掛ける後輩たちに微笑んで、サンジは炒めた野菜を皿に盛って、女の子たちの前に差し出した。
「どうぞ」
眩しい笑顔付きで。

「今日は生姜焼きを作ろうか」
班に分かれて、豚肉にすりおろした生姜とみりんと醤油をつける。
「サンジくん、次はぁ?」
ただ話したいがために近寄る女の人。
aaaの気持ちが少しだけ沈んだ。
「肉を焼いて、それから、」
サンジが説明している様子を見ていると、目が合った。
慌てて目を反らして、それからのサンジの表情は、aaaにはわからなかった。

作り終わり、皆が帰って、仕方なくaaaが一人で皿の後片付けをしていると、サンジが後ろから声をかけた。
「……aaaちゃん」
「うわっあ!」
びくっ、と驚きのあまり皿を落としかける。
「ねぇ、aaaちゃん。おれさ、……」
棚に皿を置いて振り返ったaaaの頬に触れるサンジ。
少しの沈黙が、二人の間を支配した。
「…サンジ先輩?」
「バイトしてるんだ。よかったら来て?」
サンジが胸ポケットから差し出したのは、バイト先が書かれた名刺。
「…はぁ。ありがとうございます」
それを受け取り、名刺をじっと見つめると、十年前に創立され今では人気の、有名なフランス料理店の名が書いてあった。
「こ、こんなところで働いてるんですか?バイトで?」
すごいですね、とaaaが言うと、サンジが笑った。
「ずっと働きたくて、今年やっと、雇ってもらったんだよ。卒業したらそこで本格的に働くつもり」
「…おめでとうございます」
「ありがと」
サンジは笑って、シンクへ歩いた。
タオルを取って、シンクやテーブルを拭いていく。
「……いつでもいいから」
「あ、はい。絶対、行きますね」
「うん…、どうぞ」
サンジの表情に、aaaは照れて赤くなった顔を隠すように手で顔を覆い隠した。

嬉しくて舞い上がりながら、サンジに挨拶をして部屋を出た。
自転車置き場まで来ると、何か忘れたような気がしてリュックを探ると、筆箱がないことに気が付いた。
aaaは溜息を吐いて、調理室に戻った。
(そうだ…、メアド聞いてみよ…)
携帯は充電をしていて家に置いてきているから、サンジがさっきくれた名刺に書いてもらおうと名刺を取りだし、調理室の扉を開けようとすると、中から何か物音が聞こえた。
中にいる人には悪いけれど、aaaは耳を扉に当てる。
「…!」
「っ!!」
部屋には二人いるようで、一人の声の主がサンジだということがわかった。

ええい、気になるんだから仕方ない!

ほんの少し、5cmほど扉を開けると、中を見た。
大学生であろう女の人がサンジに抱きしめられていた。
サンジはその女の人の背中を摩っている。
あまりにも衝撃的なシーンに唖然とするaaaは、手から名刺が落ちたことに気が付かなかった。


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