運命は交差している | ナノ
04

「あ、やだ…」
なぜか震える唇と指。

抱きしめ合う二人をじっと見つめていると、建て付けが悪いのか、半ばもたれ掛かっていた扉がガタリと音がした。
「!」
aaaが慌てて扉から退く。
扉の隙間から見えた二人が、扉を、aaaを見つめていた。
aaaはなぜかその場から走り出し、名刺を置き去りにしてそのまま大学を出て行った。
息切れしてもなお走り続け、大学の近くの大きな公園で足を止めた。
「はぁっ、はぁ…」
七月上旬の気温は高く、aaaの体を火照らせていた。
公園にあった木製のベンチに座ると、aaaは汗を拭い、溜息を吐いた。
(…サンジ先輩、彼女いたんだなぁ)
うっすらと瞳に溜まった液体を、aaaは汗のせいにした。

一方、サンジは――。
扉の方からガタリと音がして、サンジは扉を見た。
少し隙間のある扉。
「なんだろ」
サンジは扉をガラッと開くと、そこには誰にもいなかった。
その代わり、床に紙きれが落ちていた。
サンジは拾い上げて見てみると、それは自分のバイト先の名刺。
「…!」
思い当たる人は、一人しかいない。
「ごめん、ちょっと行ってくる」
サンジはそう告げて、調理室を後にした。
廊下を見渡し、そこにいたくまのすごい男に声をかける。
「おい、さっき、ここをレディが通らなかったか?」
「走ってた女ならあっちに走っていったが…」
その男が指差した先には、階段。
「ありがとな!」
サンジは礼を言って、階段に向かった。
「あぁ、さっきレディが走ってきませんでしたか?」
階段付近にいたピンクの髪の、なぜかピザを食べている女の人に言った。
「んー…多分、この階段を下にいったと思うぜー」
ばくばくとピザを頬張りながら、その女の人は言う。
「…ありがとう!」
サンジは階段を駆け降りた。
左右を見回し、そこにいた人に手当たり次第声をかけ、aaaを探す。

どこにいるんだ、aaaちゃん。

「…自惚れてただけかぁ」
aaaが空を見上げると、かさかさと木の葉が揺れた。
木漏れ日がaaaを照らす。
aaaはベンチに深く腰掛け直し、熱を保つ地面につかない足をぶらぶらと木の葉のように揺らした。
「……サンジ先輩」
また泣きたくなってaaaが目を擦っていると、ざあと風が吹いた。

「aaaちゃん!!」

手を止めて、aaaが声のする方向に目をやると、そこにはサンジがいた。
「…サンジ先輩、なんで、こんな場所に……」
「…クソ聞き回ったぜ。結構近くにいて、よかった」
サンジは額から流れる汗を拭う。
「…これが、落ちてたから」
サンジが握りしめていた、汗でよれよれの名刺をaaaに見せた。
「…これって、私がもらった……」
「これ、aaaちゃんにしかあげてねぇんだ」
「…!!」
aaaがサンジを驚きの眼差しで見つめた。
サンジはにっこりと笑っている。
「なんで、私に…?、あの、カノジョさんは…?」
「……彼女?、あぁ、あの人は、あのレディはおれの彼女じゃねぇよ」
はは、と苦笑いをしながら、サンジが言った。
「あの人はおれのことなんか眼中にねぇよ。それにおれも、aaaちゃんしか興味ねぇし?……aaaちゃんにしか、来てほしくねぇから」
「!!」
サンジの言葉に驚くaaa。
サンジはその場に跪くと、aaaの手を取り、そして、手の甲にキスをした。
「レディ、あなたを好きになりました。おれでよければ、付き合ってくれませんか?」
きらきらと光る木漏れ日がサンジに照っている。
aaaの胸がドキドキと高鳴り、顔が熱くなっていく。
「サンジ先輩…っ!」
aaaはサンジに抱き着き、抱き留めたサンジはaaaの頬にキスをした。
「私も、私も好きですサンジ先輩…!」
ぽろぽろと溢れる涙を拭いもせず、aaaはサンジに抱き着いたままだった。

数十分後。
「aaaちゃん、そんな泣かないでくれよ」
背中をさするサンジがそう言った。
「ご、ごめんなさい…」
ぐい、と目をさすったaaa。
サンジはaaaの赤くなった目元にキスをして、aaaを横抱きにして立ち上がった。
「ねぇ、aaaちゃん。調理室にあった筆箱って、aaaちゃんのだよね?だから戻ってきたんだろ?」
「う、うん…」
こくり、と頷いたaaaがたまたま公園内を見渡すと、たくさんの人がこちらを向いていた。
「さ、サンジ先輩、みんな見てますよ!下ろしてくださいーっ!」
「調理室に着いたら下ろしてあげるから」
aaaの頬に二回目のキスを送り、人目も気にせずaaaを姫抱きにしたままサンジは大学に向かった。
公園の木々が、公園内を巡る人たちが、二人を見守っていた。

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