運命は交差している | ナノ
02

「肉じゃが作ってみてよ」
いや、無理なんです。マジで本当料理は苦手なんです。だからここにいるんです。お腹壊しても責任取りませんよ。

今日、サークルがないとは知らずに調理室の扉を開けると、いつもはある歓声もなく、サンジが一人でテーブルに座って何かを書いていた。
「…あ、aaaちゃん」
「こんにちは。今日は誰も、いないんですね」
「今日ないからね」
正直だよね、と笑いながらサンジはペンを滑らせる。
「え、そうだったんですか…」
「うん。……あ、なぁ、aaaちゃん、今、暇?」
「え?、はい、大丈夫ですけど…」
「じゃあ、前に言ってた肉じゃが、作ってよ」
ふ、とaaaに笑いかけたサンジ。
「え…いや…本当、ね、駄目ですよ…」
しどろもどろになりながら、aaaはサンジを窺う。
「ちょうど、食材はあるし」
サンジは笑顔でじゃがいもとその他を差し出す。
「だっ…、めです!」
ふるふると勢いよく首を振る。
「なんで?」
「…さ、サンジ先輩が作るのより、絶対おいしくないから…です」
サンジはaaaの言葉に目を丸くして、それから微笑んだ。
「…そんなの、食べてみないとわからないだろ?」
立ち上がって近寄り、ほら、と背中を押してきたサンジ。
半ば強引に、aaaは肉じゃがを作ることになった。

「じゃがいもを切って…」
いつも家で作るのとは違い、誰かに見られて料理を作るのは初めてで、aaaはぎこちなく包丁を握り、じゃがいもを切り始めた。
「…ねぇ、aaaちゃん」
サンジはシンクの側のテーブル席のイスに腰掛けていた。
「は、はいっ」
さく、とじゃがいもを四分割して、aaaはサンジを見た。
「料理は続けて」
「…あ、はい」
もう一つのじゃがいもを手に取り、切っていく。
「なんでこのサークルに入ったの?」
「…あ、あー、っとですね、私今年から一人暮らし始めたんですけど、料理全然出来なくて…」
ざく切りにしたじゃがいもを鍋に入れ、次に切っておいたタマネギとニンジン、炒めた牛肉を入れた。
「へぇー…それでかぁ」
「え、あの、変ですか?」
鍋に醤油、みりん、酒を入れてフタをして、スイッチを押した。
一台だけある、IHクッキングヒーター。
「んーん。自慢じゃねぇけど、このサークルに入るレディはおれ目当てみたいだから、aaaちゃんみたいな子は珍しいんだよ」
「あー…はぁ」
aaaは、初めて来た時のことを思い出した。
サンジの周りを女の人たちが囲んでいる風景。
「…サンジ先輩かっこいいですからね」
「……どうも」
肘をついて、じっと見つめてくるサンジの視線を気にしながら、頃合いになっただろうとフタを取って、じゃがいもに箸を突き刺した。
すっぽり箸が通り、固くない。
「よし、って、わ!!」
IHのスイッチを切り、皿を用意しようと身を翻すと、皿を持ったサンジが間近にいた。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます…」
皿を受け取ると、aaaは肉じゃがを持って、サンジが座り直した席に、肉じゃがを置いた。
「おいしくないかもですが、どうぞ」
「…いただきます」
ぱん、と手を合わせそう言ったサンジは、すぐさま箸を手に取ると、じゃがいもを口に運んだ。
「…クソ、うまい」
「……えっ!?」
「クソうめぇよ、これ」
サンジはぱくぱくと肉じゃがを頬張り、肉じゃがはみるみる内に減っていき、ものの五分でなくなった。
少なく盛っていたからといっても、これは速い。
「…こんなんだったら毎日食いてぇぐらいだよ」
はは、と笑ったサンジに、aaaは顔を赤らめた。

それって、プロポーズですか。
まだ私たち、付き合ってもないですよ、先輩。


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