運命は交差している | ナノ
27

六日目。
「aaaちゃん、ここカラオケもあるんだって。行かねぇ?」
「…行く」
豪華客船で優雅にカラオケです。

サンジは料理が出来るだけでなく、歌も上手かった。
「すごいね、サンジくん…」
初めてサンジの歌声を聴いたaaaは、本当になんでも出来る人なんだな、と思った。
「え?何が?」
間奏でドリンクを飲んでいたサンジが振り向いて聞いた。
「ううん…、なんでもないよ」
「…そう、」
またサンジは歌い始めた。

「…で、なんだったの?」
「えっ、あ、いや……歌、うまいなって思って…」
「そうかな、普通くらいだと思うけど」
サンジはテーブルにマイクを置くと、ソファの背もたれに体を預けた。
「いやいや、うまいよ」
「そうか?…ありがとう、aaaちゃん」「ううん」
aaaはマイクを手に取ると、スウと息を吸って、吐いた。
「…この曲、全部英語だからちゃんと歌えるかわかんないけど…頑張るね…」
「…うん、頑張って」
前奏が流れ始め、サンジはテレビに映ったその歌の歌詞を見た。
「honey,honey, how you thrill me――」
サンジにとって、これは聞いたことのない曲だった。
歌詞はaaaの言った通り、すべてが歌詞のようだ。
「you're a love machine」
aaaが初めての歌声に聴き入るサンジ。
「Oh, you make me dizzy!」
サンジは歌詞を見た。
くらくらする、と恋した人が言っている歌詞のようだ。
「You look like a movie star!」
「…ん?」
サンジが歌詞を注視する。
aaaはリズムに遅れないように必死に歌う。
「you're a doggone beast!」
あなたはびっくりするくらい野獣よ、と叫ぶaaa。
「you better not get too high. But I'm gonna stick to you, boy, you'll never get rid of me. There's no other place in this world where I rather would be―…」
一気に歌いきったaaaはマイクをテーブルに置いて、お茶を飲んだ。
「…ふぅ」
「お疲れ、aaaちゃん。あのさ、この曲…」
「ん、この曲ね、サンジくんっぽいなって思って…」
aaaはサンジに説明した。
「……そのままでいて欲しい。でもあなたに執着するの、あなたは嫌がったりしないから。だって、わたしの居場所は他にないもの、か。ラブマシーンとか俳優とか野獣とか……これがおれのイメージなわけ?」
「えっ、でもほとんど合ってるでしょ…?」
aaaの上目遣いに、サンジは「うっ」と唸った。
だいたいの女性にメロメロになるところはラブマシーンだし、実際俳優だし、夜は野獣だし、合ってると思う。
aaaはそう感じながら、うんうん唸るサンジを見ていた。
「…まぁ、合ってる、けど」
サンジは何回か頷いた。
「おれって…野獣?」
サンジがaaaの腰を抱くと、ぐっと顔を近寄せた。
「…夜は…」
「はは!そっか!」
サンジはaaaの唇に、ちゅっと軽くキスをした。
「…ハニー」
「サンジ、くん」
耳元でサンジに囁かれ、aaaは胸が高鳴ってしまった。
こういうことは、いつまでも馴れない。
「なぁ…ハニー」
aaaの服のボタンを上から二つ外したサンジ。
「サンジくんっ、だめ…!」
「…ダーリンって言ってくれたらやめる」
ハニーとダーリンって新婚さんごっこか、と半ば呆れながらaaaは「ダーリン…」と呟いた。
「はぁ…!aaaちゃん…!!」
サンジは勢いよくaaaに抱き着いた。
「なんか…クソうれしいっつーか…aaaちゃんにそういうこと言われると…、なんつーの?萌える…って言うのか?」
「なにそれ!」
サンジの発言に、はは、とaaaは笑った。

「…サンジくん、ほら歌入れなよ」
「ん、ああ」
サンジはタッチパネルを操り、曲を入れた。

旅行っていうより、デートって感じ。


〇ABBA「honey,honey」から歌詞を抜粋

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