運命は交差している | ナノ
03

大学を卒業した二人。
dddはアラバスタという大企業に勤めることになり、マルコは本格的にモデルをやることになった。

「マルコ、飲みに行こう」
「……はい」
シャンクスに飲みに誘われたマルコは頷いた。
あれから、シャンクスとマルコはそれなりに仲良くなった二人。
「――おい、聞いてんのか、マルコ!」
冷えたグラスを持ちながらマルコを呼びかけたシャンクス。
マルコは、はっとしてシャンクスを見た。
「はい」
「……あんまり雑誌とか気にしねー方がいいぞ。逆に空回りするからな」
「…ハァ」
酔ってへらへら笑うシャンクスに、マルコは呆れた。
しかし、シャンクスが言っていることには一理ある。
マルコは二日前に、あるゴシップ記事を見てしまっていた。
それは、マルコの恋人であるはずのdddとサッチのデート記事。
二人は友達以上恋人未満の微妙な関係であることをマルコも承知の上だ。
しかも二人に問い詰めたところ、あれはただ食事に行っていただけらしい。
二人にはよくあることだが、マルコという恋人がいながらサッチと浮気、などという嘘八百な記事に腹が立っていた。
「…思い詰めてもなんもいいことないぞ」
「シャンクスさんはこういうことありましたか」
マルコは、はぁ、と溜息を吐いた。
「んー?んー…そうだな、ないわけないだろ!おれみたいなベテランになるといろんなこと書かれるぞ。捏造記事とかな!!」
しかしそれを笑い飛ばして言えるシャンクスはやはり寛大な心を持っていると思った。

それから一ヶ月も経たないある日。
「は…?」
ガシャン、とテーブルに飲みかけのコーヒーカップを落としてしまった。
割ってしまったとかを気にする余裕もなく、マルコはテレビ画面に釘付けだった。
テレビでは、シャンクスが事故に遭い左腕を失ったというニュースをやっていた。
「マルコさん?どうした、ん…です」
キッチンからやって来たdddもニュースを見て唖然としていた。
マルコはすぐさまシャンクスの入院する病院に向かった。

「シャンクスさん!!」
「おー、マルコ!」
左腕をなくしたはずのシャンクスは、いつものように明るかった。
「来てくれたのか、悪いな」
dddがフルーツを渡すと、嬉しそうに笑ったシャンクス。
「これが噂の彼女か!かわいいな!」
シャンクスはドン、とマルコの胸を叩いた。
「シャンクスさん、大丈夫なんですか…!」
「ん?あぁ、……モデルのことか?それな、事務所にももう言ってあるんだが…、やめようと思うんだ!」
「は…?」
シャンクスの言っていることが、マルコには一瞬理解出来なかった。
「もうおれも30だ。…これを区切りにしようと思ってな。おれは大学院の研究生でな、勉強したいと前々から思ってたんだよ」
シャンクスの顔は、残念だとは全然思ってない様子だった。
いや、まるで、これからが楽しみで仕方がないようにも見えた。
dddは苦々しい表情のマルコを視界に捉えながら、シャンクスに声をかけた。
「素敵ですね。シャンクスさんなら教授にだってなれますよ」
「だっろー?」
dddがふとマルコを見やると、マルコがシャンクスに頭を下げた。
「第二の人生、応援してます。モデル、お疲れ様でした!!」
マルコは大声でそう言うと、病室を出ていってしまった。
dddもマルコを追うように去った。

「マルコさん…」
暗い部屋に一人佇むマルコに、dddが声をかけた。
シャンクスが事故に遭ってから一週間ほどこんな感じだ。
仕事に行って、帰ってきて、また部屋に篭る。
「ご飯、出来ましたよ」
「………腹へってねぇよい」
「お腹すいてなくても食べなくちゃです」
dddがマルコに触れようとすると、マルコに手を叩かれた。
「いらねぇよい!」
「……」
尊敬し、憧れだったシャンクスがモデルをやめる。
目標がなくなってしまったマルコがとても痛々しく見えた。
「…マルコさん、シャンクスさんは新しい人生を送るんです。マルコさんはマルコさんで、マルコさんの人生を歩まなければならないと思います」
マルコが暗い目でdddを見た。
「…ddd、」
「マルコさんは、どうしてモデルになったんでしたっけ?」
「…急に、なんだよい」
ハテナを頭上に浮かべるマルコに、いいから早くと急かしたddd。
「…馬鹿サッチに負けたくないから」
なんとも子供っぽい理由なんだ、そう思ってdddがクスクスと笑うと、マルコがムッとした。
「今もそうなんじゃないですか?サッチさんにはまだ全然勝ててないですよ。だってマルコさん、まだ雑誌の表紙飾ったことないでしょう?」
「!……そうだな」
dddが言いたいことを理解したマルコは頷くと立ち上がった。
「ddd、悪かったよい」
「いいえ。新しくマルコさんを知ることが出来たので満足です。……結構、ヘタレなんだなって思いました」
「それは忘れろい」
ふん、とマルコは笑って、dddを抱きしめた。

それから半年、マルコとdddは婚約し、まもなく結婚した。


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