運命は交差している | ナノ
02

大学に入って三年と半年。
マルコとdddは高校の時と同じように、将来のことについて悩んでいた。

「マルコさん、どうしますか就職」
「んー…モデル、とかな」
「ふふ、サッチさんほんとになりましたね」
サッチは高校の時に言っていたモデルになるという夢を実現させ、今は雑誌でファッションモデルをやっていた。
結構人気でファンレターや差し入れをもらうらしく、二人によく自慢している。
「あんなやつが……」
ありえねぇよい、と呟くマルコ。
しかしサッチは悪人面だがスタイルはいい方だ。
明るい性格もモデルにあっていると思う。
「dddはどうするんだい」
「どうしましょうね。……就職」
溜息を吐いたdddは肩を落とした。
「…おれは、もっと勉強したいと思ってる」
大学院に行くというマルコ。
「マルコさん、勉強得意ですもんね。いいと思います」
dddがマルコに微笑むと、マルコは優しく笑った。

マルコ、大学の帰り。
「おい、お前」
「なんだよい」
マルコの隣に来た大柄の男が家路に着くマルコを引き止めた。
「モデルに興味ねェか?」
大柄の男が差し出した名刺は、見た覚えのある名前だった。
「ジョズ……サッチをスカウトにしたやつかい」
「どうだ?あんた」
ジョズはマルコがモデルに向いていること、就職が決まっていないならモデルなろう、と勧誘を続けた。
「急には無理だ。…ちょっと待ってくれよい」
「あぁ、決まったら電話してくれ」
ジョズはマルコに説明書を渡すと、人混みに紛れ、消えていった。

「……ていうことだよい」
マルコは自分の家にサッチとdddを呼び出した。
「マジか!ジョズなんも言ってこなかったぞ!」
「マルコさんがモデル…」
マジか、と騒ぐサッチを気にせず、dddはマルコをじっと見た。
「で、どーすんだよマルコォ!」
ビールを飲みながら、サッチはマルコに尋ねた。
「……おれは、やる気はないよい」
「そうなんですか…?マルコさんがモデルって、変な感じだけど、案外合うかもですよ」
マルコがきっぱりと断るのを、dddが止める。
「いや…、おれは勉強してェんだい」
「…勉強、ですか」
dddはつまみのイカを食べながら復唱した。
「そっか。まぁ勉強が友達のマルコにゃモデルは無理だろーし、いんじゃねーの!」
へらへら笑ったサッチの一言が、癪に障ったマルコは眉をひそめた。
「じゃあ、してやるよい!てめーが馬鹿に出来ねぇようなベテランになってやるよい!!」
「はっ!?何その闘争心!」
マルコはサッチをギロリと睨みつけて、決意をあらわにした。
「それも、いいと思います」
にこ、と微笑んだddd。
マルコは一度頷くと、すぐ名刺を出して電話をしていた。

マルコがモデルを始めて数ヶ月経ったある日。
「マルコってずっとモデルやんだよな」
「でしょうね」
音も立てず、ブラックのコーヒーを飲んだdddはサッチの問いに答えた。
サッチの仕事がたまたまオフでなおかつdddも大学の授業が入っていなかったため、二人はカフェにいた。
「…dddはいいのか?」
「マルコさんがしたいなら、いいんじゃないですか、ね」
「ふーん。ま、おれは別にいんだけど。あ、なぁ、聞いてくれよ!」
何かを思い付いたサッチは続ける。
「シャンクスってモデル知ってるか?dddとマルコの大学の出身らしくてよ!しかも20でモデルになったって!」
「シャンクス…?」
シャンクスと言えば、赤髪が特徴的な、雑誌、ウェストブルーの有名ファッションモデルだったはずだ。
そのシャンクスが、同じ大学で、近しい歳でスカウトされ、そしてモデルになった。
マルコとまったく一緒だ。
「…へぇ、そうなんですか」
「マルコとそっくりだなって思ってよ」
「そうですね」
ミルフィーユをぱくりと食べながら、dddは相槌を打った。

こんな偶然があるんだろうか。

「――らしいですよ、素敵ですよね」
「……へぇ」
その夜、dddはマルコにそれを伝えた。
「シャンクス、か。……今日、会った」
「え!そうなんですか!?」
なんという偶然だろうか、サッチとdddが話した日とマルコとシャンクスが話した日が同じだなんて。
シャンクスはレッド・フォース事務所のモデルで、あまり他の事務所と共演を望まないと言われているらしい。
だから、モビー・ディック事務所の新人モデルが一緒に雑誌に載るなんてことは珍しいはずだ。
「あぁ、……すごい奴だったよい。人格も実力も、男としての心意気も。…ああいう奴が人を引き寄せるんだと思った…」
自信家のマルコをこんなに言わしめるシャンクスという男は、どれだけすごい人物なんだろうか。
dddは少なからず驚いていた。
「…おれもあんな風になりたいと思ったよい」
マルコの目は燃えていた。

モデルとしてこれからのマルコがやる気を持ったのは、シャンクスのおかげといっても過言ではなかった。


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