運命は交差している | ナノ
15

サンジの初めてのモデルの仕事からすでに一週間。

大学から帰ってきたaaaが時計を見ると、5時を指していた。
サンジは早めに帰ってくると言っていたから、aaaはテレビを付けて、冷蔵庫に向かった。
乾いた喉にお茶を流し込み、潤す。
ふぅ、と溜息を吐くと、玄関のドアが開く微かな音、そして廊下を走る騒がしい音が聞こえ、バン、と大きい音を立ててリビングのドアが開いた。
「aaaちゃん!」
「わっ!おかえり、サンジくん…どうしたの?」
息を切らせて帰ってきたサンジに、aaaが問う。
「……aaaちゃん。おれと一緒にアダムスタジオに行ったあの日、マリモと、…ゾロとなんかあった?」
「――えっ?」
aaaが少したじろいだのを、サンジは見逃さない。
「…あったんだ。なぁ、何があったんだ、言ってくれ」
サンジがaaaに詰め寄るが、aaaもそれに合わせて後退する。
「急に、どうしたの?」
「……いいから、aaaちゃん教えてくれ!」
ゾロさんとあったこと、サンジくんには言いたくない。
なぜか、そう思ってしまった。
「な、なんにもないよ!」
aaaは目を泳がせたまま答えた。
「aaaちゃん!!」
頑ななaaaに苛立ったサンジが大きな声でaaaを呼んだ。
初めてサンジに怒られた。
そのショックな出来事にaaaは体を震わせて、涙が零れないよう我慢していた。
やってしまったという表情をするサンジ。
目元に溜まった涙を拭おうと差し延べてきたサンジの手を、aaaは無意識に叩く。
「……どうして、どうして信じてくれないの…」
はぁ、と息を吐いてaaaは涙を拭うと、サンジの横を通り抜け、家を出て行った。

aaaはケンカして出て来てしまった手前、サンジのところには戻れないと、自分の家に行った。
アパートの一階、ベランダの柵の近くの植木鉢の下に家の鍵を隠してある。
aaaはその鍵で家に入った。

サンジと同居を始めたため、ほぼ使われていないaaaの家はほこりが積もっている。
そろそろ売り払おうと思っていたため、引っ越してきた当初の運ばれてきたダンボールもそのまま。
ダンボールによって片付けられた部屋はあまりにも寂しく、aaaはしまわれた布団を出して、ご飯も食べずに寝た。

ケータイも財布も持ってない。
でも今はサンジくんと会いたくない。
なんでゾロさんにキスされたことを言えなかったのか、自分でもわからなかった。

朝起きると、すでに明るかった。
五月の少し寒いような、しかし暖かい空気を味わいながらaaaは時計を見た。
今は九時、幸い土曜だから大学はない。
aaaはご飯どうしよう、と思いながら顔を洗って髪を整えて家を出た。
少し頭の中がすっきりしたら、サンジの家に帰って謝ろう、そう思っていた。
「よう、aaa」
薄めの茶色のサングラスをかけた、芸能人であるゾロが賑やかになり始めている街に、普通にいた。
「モデルも普通に街にいるんですね…」
「当たり前だろ。つーか、てめェ、どうしたんだ?やつれてるみてーだけど」
ゾロがaaaの頬に触ると、そう言った。
「あ、あなたのせいです…」
ゾロさんが元凶です、とaaaが呟くと、ゾロは「はぁ?」と素っ頓狂な声を上げた。
「どういうことだよ」
「あなたのせいで私は…――」
きゅるる。
aaaの言葉を遮るように鳴った音はaaaの腹から。
「……食いに行くか?」
親指で後ろを指差したゾロに、aaaは首を縦に振った。

ジャヤカフェにて。
「てめーアホだな、ちゃんと考えてから出てこいよ」
サンジとケンカしたことを話すと、ゾロはけらけらと笑った。
aaaは頼んだサンドウィッチを頬張る。
「らって、ひょうがないひゃないれすか!」
「はー…、まぁ、それはおれの詫びってことで」
ゾロはaaaの食べているサンドウィッチを見た。
「ふむ…っ、ありあと…ごらいまふ…」
サンドウィッチをごく、と喉に通すと、aaaは一回、息を吐いて真剣な面持ちをした。
「なんで私、あんなにゾロさんとあったこと隠したかったんだろ…。ゾロさんのことは好きじゃないのに」
ゾロに好意はまったくないと言い切るaaa。
「はっきり言いやがる……。わかんねェのか?好きじゃねェから、おれにキスされたことに責任感じてんだろ。カレシじゃねー男とキスしちまってよ」
当たり前みたいな顔でゾロはそう言って、コーヒーをごくりと飲んだ。
「…あ…あなたのせいなんですけど…」
ゾロの態度にイラついて声が震えた。
「……ね、ゾロさん。なんであんなことしたんです?…彼女、いるのに」
彼女、と言った途端、ゾロがaaaを睨んだ。
「あっ、噂です、けど…」
「……どうしてだろうな」
いつもより幾分弱々しい声色をしたゾロは、はぁ、と溜息を吐いた。
「彼女と、何かあったんですか?」
「情けねぇから言えね」
「えー!」
カフェに人が入り始める。
女子高生らしき制服を来た人たち数人がレジで何かを頼む。
「…ゾロさん!サンジくんとの誤解を解いてくれませんか!」
aaaはゾロの両手を自分の両手で包み込んだ。
「……わかった。おれが悪いしな」
ゾロは頷くと、イスから立ち上がった。
aaaはレジに向かうゾロについて行き、急に店を出たゾロの腕を掴んだ。
「あの、どこに…」
「てめェがおれの名前を大声で呼ぶから気付かれただろ」
カフェ内にいた女子高生を窓越しに見ると、きゃあきゃあと騒いでいるようだった。
「あ…、ごめんなさい。でも、これからどこへ?」
「これから用事あっから事務所に行くけど、来るか?どーせ…暇だろ?」
「…行く!」
aaaはサニー事務所に向かうゾロの後ろをついていった。

噂、本当だったんだ。

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