運命は交差している | ナノ
13

アダムスタジオにて。

「わあ!これが、スタジオ!」
aaaはカメラや照明をまじまじと見た。
「サンジさん、ゾロさん、とりあえず楽屋に――」
緑髪を一つに束ね、三角巾をかぶったスタッフが二人に言った。
「aaaちゃん、行こう」
サンジはaaaの手を握り、楽屋へ向かった。
「今日は初めてだからナチュラルにサンジちんを出すために、メイクは軽くしまーす」
サンジにそう言ったスタイリストは薄緑の髪のショートで唇が分厚めの可愛い顔立ちの人だった。
幼く見えるなぁ、とaaaが思っていると、ゾロは一人でさっさとメイクを終えて、スマホをいじっていた。
メイク時間は約十分、早い方だ。
aaaはイスに座って、ファッション雑誌があったので読んでいると、いつの間にかスマホをデスクに置いたゾロに声をかけられた。
「てめェ、なんて名前だ?」
「え?あ…aaa、です」
「…へェ、イイ名前じゃねーか」
ふ、とゾロが笑うと、歳はサンジと変わらないらしいが、色気が爆発していた。
「は…はぁ、ありがとうございます…」
イケメン芸能人と話をしたからか、aaaはほのかに顔を赤くする。
aaaはサンジがむっと顔をしかめながら鏡越しに二人を見ていて、しかもゾロが自分を見ていることに気がついていなかった。

サンジのメイクが終わり、何十分か後に緑髪のスタッフに呼ばれた。
「ゾロさん、サンジさん、そろそろスタンバイお願いしまーす」
ゾロは無言で立ち上がると、部屋を出て行った。
「サンジくん、呼ばれてるよ?」
aaaが微笑むのを見て、サンジはaaaをぎゅっと抱きしめた。
「え!?…さ、サンジくん?」
aaaは公共の場だからとサンジの肩をやんわりと押すが、サンジは力を緩めない。
「aaaちゃんは、さ……、おれの彼女だよな?」
耳元で囁かれ、aaaの体が少しびくつく。
「…うん、そうだよ」
「……だったら、………いや、なんでもねェ」
aaaがサンジを見やると、彼は曇った表情をしていた。
「サンジくん?……、サンジくん」
aaaは少し考えて、サンジから体を離した。
サンジもすんなりと放してくれた。
「私、サンジくんのこと大好きだよ。サンジくんのことしか考えられないくらいに」
「!……はは、aaaちゃんには敵わねェな」
サンジはいつも通りの綺麗な笑顔を浮かべると、aaaと一緒にスタジオに向かった。

「撮りまーす」
カシャ、とカメラのシャッター音。
カメラマンは右腕から鎖骨にかけて入れ墨をしていて、フリョーだとaaaは思った。
サンジとゾロはソファに座りながら、ポーズを決めている。
「顔かたいよ、サンジー。もっとリラックスして」
カメラマンがそう指示するも、初めてのモデルという仕事に少なからず緊張しているサンジは強張った顔をどうすることも出来ない。
「あー…クソ」
サンジは溜息を吐いて長い足を組んだ。
aaaはカメラマンの後ろでハラハラとサンジを見ている。
「うーん、その格好もイイけど、……一旦休憩にしよっか!」
三十分も経たずに休憩とは、自分のせいだと落ち込むサンジにaaaが声をかけようとすると、カメラマンに「ついてきて」と言われた。

aaaは不良カメラマンに連れられ楽屋に来た。
「アンタ!サンジの彼女なんだってね?」
「えっ、はい」
「じゃあ、彼氏のために一肌脱げるわよね?」
にや、と笑った青髪の入れ墨カメラマンがスタイリストに何か耳打ちをすると、鏡の前のイスに座らされた。
「さぁって、メイクするよー!」
「メイクするのに、ハサミ持ってどうするの…?」
「ああぁ!!間違えたー!!」
自分でびっくりしながらハサミとブラシを取り替えたスタイリスト。
「さ、するね」
星の形をしたポーチからファンデーションを取り出して、aaaの頬にブラシを当てた。

aaaは着替えとメイクが終わると、コーヒーを飲んで落ち着いたサンジの目の前に現れた。
「サンジくん!……どうかな?」
aaaは薄ピンクのミニスカのワンピースを着ていて、そこから露出した足に映える、ワンピースとお揃いのピンクの可愛いパンプス。
サンジが喜んで緊張がほぐれたら、というカメラマンの作戦で、サンジのためにモデルのような格好をしたのだ。
「似合ってる!aaaちゃんクソ可愛い!!」
TPOを弁えず、サンジはaaaを抱きしめた。
「あ、ありがと!」
「可愛いだろ?アンタのために彼女が頑張ってくれたのよ!さ、次はアンタが頑張る番!」
カメラマンがサンジを指差した。
「そんな…!!aaaちゃん…!……おれァ、おれァ………燃えてきたァア!!」
サンジはさっきまでの緊張がなくなり、いつもの明るさを取り戻した。
ポーズはかっこよく、表情も凛々しい。
プロのモデルであるゾロにも負けないくらいにモデルをこなしている。
「いいね」
カシャ、カシャ、と何枚も写真を撮っていると、すぐ一時間が経った。
「これでいいでしょ。二人とも、お疲れ!」
カメラマンはパソコンで撮った写真を確認しながらゾロとサンジに言った。

三人は楽屋に戻ると、服を着替えた。
aaaはトイレに行き、用を済ませた後、鏡で自分のメイクを見た。
「すご…、別人みたい…」
スタイリストとかメイクさんってすごい、と感嘆しながらaaaがトイレから出ると、何かにぶつかった。
「いっ…たぁ!」
「悪ィ」
ドアの近くにいたのはゾロだった。
「あっ、こちらこそ、すいません!えっと、ゾロさんもトイレですか?ってこっち女子用…」
「なァ、aaa」
「えっ!はい!」
ゾロはaaaの顎を掬うと、視線を合わせた。
「さっきの服似合ってた。…まゆげなんかやめておれにしねェ?」
「えっ、いや…私は……!」
熱烈な視線に、aaaは戸惑い、口ごもる。
「返事はいつでもいいぜ」
ゾロはaaaに軽くキスをすると、トイレに用はなかったのか、楽屋がある方に踵を返した。
aaaは呆然としながら、ゾロと触れ合った唇を指でなぞった。


prev next


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -