運命は交差している | ナノ
11

同居生活、始まります。

「サンジくん!!、あの、どうかな…?」
「クソうめぇ!」
四月になり、同居を始めた二人。
aaaはサンジに朝ごはんを振る舞っていた。
「ほんと?…ありがと」
ぱあっと明るくなったaaa。
一緒に朝ごはんを食べるのは、新婚生活のようでなんだか照れる。
「…aaaちゃん、おれ、早く帰ってこれるように頑張るから」
サンジは上着を羽織ると、まだまだ肌寒い四月の風を感じながら仕事に行った。
aaaはサンジを見送った後、自分も大学の準備をし、誰もいない部屋に「いってきます」と言って家を出た。

「―…のマリネです」
音を立てずに皿をテーブルに置くサンジ。
料理を作って運んでという工程を何回繰り返したかわからないくらい働いて、今は閉店間近の十時。
いつも大賑わいの店内も、この時間帯の客は数えられるほどしかいない。
サンジが皿を洗い、そろそろ帰ろうかと思っていると、コックたちが厨房入り口のドアで騒いでいた。
「どうしたんだ?」
サンジが声をかける。
「おーサンジ、いやな、あのネーチャンがずっといるんだって話をしててよ」
ヘボイモコックが話し始めた。
厨房の窓から見える席にいるスーツ姿の眼鏡をかけた女性が一品頼んでからは何も食べず、読書をしながらコーヒーを飲んで数時間居座っているらしい。
「待ち合わせかなんかだろ。…彼氏が来ないとか」
サンジが言うと、ほかのコックたちは納得して頷いた。
が、サンジは自分で言っておきながら女性を不審に思っていた。
誰かを待っているようには見えないのだ。
サンジは女性の正体を確かめるべく、女性のもとへ向かった。
「レディ。もう一杯いかがですか」
にっこりと笑ったサンジは女性を見た。
「そうね、いただくわ。……その前に、これ、あなたが作ったの?」
女性が指を差したのは、マリネが入っていただろう皿だった。
サンジが女性にマリネを作ったのはさっきのを除いて一回しかない。
「…はい。それがどうかしましたか?」
「ふふ、いいえ。…おいしかったわ。あなた、サンジさんでしょう?容姿端麗で料理も最高のコックさん」
黒髪を揺らして、女性が聞いた。
「ありがとうございます。レディに褒められるとは、コック冥利に尽きます」
「この辺では有名よ。…ねぇ、サンジさん。あなた、モデルに興味ないかしら?」
女性はロビンと書かれた名刺をサンジに差し出した。
「モデル…?」
サンジがそれをまじまじと見ると、ロビンという女性はサウザンド・サニー事務所の社長秘書で、そのサニー事務所はモデルや俳優を扱うところのようだった。
「なんで……おれなんですか。おれはコックですし、」
「コックだからって関係ないわ。あなたにモデルになれるすべてが詰まっているからよ」
ロビンの眼差しは本気だということを物語っていた。
「…考えさせて下さい」
サンジは名刺を受け取ると、胸ポケットにそっとしまった。
「ええ。そうね、期限は一週間よ。一週間経つまでに、それに書いてある番号に電話して」
ロビンはサンジの胸を見た。
「はい」
「…今日はあなたにこれを言いに来ただけだから帰るわね。やっぱりコーヒーはいいわ」
席を立つとレジに向かったロビンの背中を、サンジはじっと見つめていた。


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