運命は交差している | ナノ
10

秋は冬へ、冬は春へ、時間は過ぎていき、積もっていた雪が溶け始める。

三月上旬、今日は大学の卒業式――。

「サンジ先輩!これ!」
「わざわざわりーな」
卒業式は休みである四年生でない生徒がわざわざサンジのために花を持ってきてくれていた。
「さみしいですよー」
「ハハ…、そう言われると嬉しいよ」
へら、と笑ったサンジ。
女の子たちは泣きながらサンジを取り囲み、ここぞとばかりに話しかけた。
「サンジ先輩、いつでも来てくださいね!」
「あぁ…、そうだな」
サンジは携帯にメールがきているのを確認し、女の子たちと別れて大学の中へと入っていった。
「…うん?」
ある部屋から何か話し声が聞こえて、少し開いていた扉から中を覗くと、そこには教授であるシャンクスとbbbがいた。
「こっ、これは……告白!?」
サンジは中を執拗に見ながら耳をすませたけれど、二人の声が小さいことと外の声が大きいことで会話は全然聞こえなかった。
「あークソ、聞こえねェ」
中ではbbbがシャンクスに話しかけているみたいだ。
シャンクスの片方しかない腕を掴んで、涙を拭っているのか、手で顔を拭いているbbb。
「……」
サンジはじっとbbbとシャンクスを見ていた。

aaaは卒業式だから休みだと思ってテレビを見ていると、サンジからメールが来た。
「サンジ先輩から…、"大学に来て。中にいるから"?」
aaaは疑問符を浮かべながらも、「行きますね」とメールを返信し、手短に用意を済ませて大学に向かった。
aaaは卒業生でごった返すところを通り、経済学部の棟へと入った。
「中って…どこ?」
適当に走り回り、誰もいない廊下を通りすぎ階段を上り、角を曲がると、そこには見知った金髪が部屋を覗いていた。

「先輩っ、サンジ先輩!」
遠くから名前を呼ぶ声が聞こえ、サンジがそっちを見ると、携帯を持ったaaaがいた。
「そんなところで何してるんですか。はたからみたら変人ですよ…」
「いや、これ、見てくれよ」
ぴ、とサンジが扉を指差すと、aaaは静かに扉に手を当て、部屋を覗いた。
aaaが目撃したものは、シャンクスとbbbのキスシーンだった。
「うわぁああ!」
aaaは大声を上げて驚き、サンジに抱き着いた。
サンジは唇の前で人差し指を立てて、しーと言った。
「こっ…これって、告白したってことですよね?」
小さな声でサンジに囁いたaaa。
「うん、多分。…もっと聞こえねェかなぁ?」
「だ!だめですよ、そんな野暮なこと!!ほら、行きましょう!」
aaaはそっと扉を開けていくサンジを止め、サンジをぐいぐいと引っ張ってbbbとシャンクスがいる部屋から遠く、違うところへと移動した。

「気にならねェの?」
「気にな…ら、ないっです!」
ぶんぶんと首を振るaaa。
「あ…、先輩」
「うん?」
窓から卒業生を見ながら、サンジはaaaの声に耳を傾けた。
「卒業、おめでとうございます」
「…ありがとう。あのさァ、aaaちゃん」
「はい…?」
aaaはサンジを見つめた。
じっと外を見ているサンジは卒業式だったからスーツを着ていて、かっこよさも倍増だ。
「もう先輩じゃねぇから、先輩って言うの、ナシな。あと、敬語も。恋人なのによそよそしいだろ」
「え…っと、でも…」
「なぁ、呼んで」
サンジはaaaの肩を掴んで、向かい合った。
「……サンジ、くん!」
慣れない呼び方に顔を真っ赤にして、aaaは声を振り絞った。
「…やべ、勃った」
「っ!」
「早く帰ろ」
サンジは笑いながら、aaaを引っ張った。
「あ、aaaちゃん」
「…ん?」
かつんかつんと革靴を鳴らしながら階段を下りていると、サンジがくるりと振り返って、aaaと目線を合わせた。

「一緒に住もっか」

「……え?そんな、え?」
「もっと、一緒にいてェ」
はは、と照れて頬が赤いサンジにつられて顔が熱くなっていくaaaはニヤけながらサンジに微笑んだ。
「私で、いいのなら……喜んで」
赤い顔を見られまいと両手で顔を覆ってaaaは呟くと、その場でしゃがみ込んだ。
「aaaちゃん…」
サンジもしゃがんで、aaaの後頭部に手を当てた。
「サンジせんぱ…くん」
「…うん、好きだ」
二人はそっと唇を重ねた。

まだ寒い三月の風がどこからともなく吹いて、サンジとaaaの髪を揺らし、aaaはサンジに抱き寄せられ体をサンジに預けた。


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