猫と停電

「サンジ、ゾロ、どこ?」
「ここだ」
「ここだよ、aaaちゃんっ」

真っ暗な部屋の中、aaaはうろついている。
「サンジくーんっ、どこ?」
「ここだよ」
冷たいaaaの手が、サンジの温かい手に触れた。
「サンジ!!」
「おかえり」
「うん。サンジ、ゾロ、ただいま!」
部屋は寝室。
ダブルベッドに三人がいる状態。
「冷たいね…」
「うん、寒かったよ!」
「おれがあっためてやるよ」
ゾロの声と共に、背中に直接当たるゾロの生温かい手。
「ひゃあっ!、なんで服の中に手入れてんの!ばか!」
ボコッとaaaがゾロを殴るとゾロは笑った。
「別にいいだろー」
「ちょっ!、見えないんだから止めてー」
真っ暗な寝室でいい歳した大人がなぜイチャついているのかというと――。

二時間ほど前。
雪が降り積もる一月。
aaaが大学から帰ってくるのを男二人は待っていた。
「うお!?」
すると急に停電したのだ。
雪のせいか。
「なんも見えねぇ…」
「みゃー…」
電気が消え、暗くなった部屋は恐ろしく静かだった。
「リビングだとテーブルとかあって危ねぇよな…。移動すんぞ、クソ猫」
「みゃ」
ゾロの首根っこを掴み、ぶら下げて寝室に移動する。
「ただいまー!!、って暗ッ!」
「aaaちゃん、こっちー」
「こっちって、寝室?」
aaaは雪の中から帰ってきて早々、暗い部屋を記憶を辿りながら歩くハメになったのである。

「サンジ、ゾロ…、大丈夫?」
「aaaちゃんこそ!寒いだろ、布団入って!」
aaaは上着を着たまま布団を被せられる。
「ほらっ、こうしたら暖かいぜ」
人間に戻ったゾロが着込んだaaaに抱き着くと、胸辺りに頬擦りをした。
「あっ、クソ猫!」
「サンジも…おいで」
aaaが両手を広げると、サンジは目をハートにさせてaaaへ飛び込んだ。
「クソ猫、邪魔だ!」
「てめーが退け!」
aaaの胸の中で大人の男二人がひしめいている。
「な、なかよくして…」
「クソ猫は猫に戻りやがれ!」
サンジがゾロをげしげしと蹴る。
ゾロは気にすることもなく、aaaに抱き着いたまま。
その反応がまたサンジを怒らせる。
「テメェ…!」
「ゾロっ、人間の姿だと裸で寒いから、……ね?」
サンジがキレる前に、とaaaがゾロを説得する。
「……あとで構えよ」
「うん」
約束をして、ゾロは猫の姿に戻った。
サンジが満足そうにaaaの胸に頭を埋めた。
ゾロはaaaの足の上で蹲り、aaaの手を舐めている。
「サンジって……赤ちゃんみたい」
母親に縋り付く赤ん坊のようだ、と。
「みゃあー」
ゾロも賛同しているのか、鳴いている。
「なっ!?」
サンジはショックからか固まっている。
「そんなサンジも好き」
にこ、とaaaが笑うとサンジも頬を緩めた。
「おれも…愛してる」
サンジがaaaの両頬を包み込むと、深く甘く口づけた。
「んん…っ」
「…ん、」
荒い息と混ざり合った唾液の音。
「っん!!」
「…aaaちゃん?」
aaaが顔を歪めた。
「…ゾロ?」
aaaの手に猫が噛み付いている。
といっても甘噛み程度。
「みゃあーみゃあー」
「ごめんね」
ゾロの小さい頭を撫でると、可愛い耳が動いた。
「みゃあーお」
aaaの手に小さい体を擦り付けるゾロ。
「猫になってもワガママなやつ」
サンジの額には血管が浮き出ている。
「サンジと同じ…」
ぽろりと口から出た言葉。
「…ウソ」
またもや固まるサンジ。
aaaはサンジの頭を撫でた。
「ほんと。ワガママで甘えん坊」
「甘えん坊はaaaちゃんも同じ!」
サンジはそう言って、aaaを胸辺りで抱きしめた。
「みんな、甘えん坊…」
「類は友を呼ぶ、かぁ」
「みゃあ…」
クスクスと三人が笑っていると、やっと電気がついた。
「ついたね」
「ん…、晩御飯、何にしようか?」
サンジはベッドから下り、aaaに手を差し出す。
「ううーん。サンジのはおいしいからなんでもいいよ。あ、ゾロ」
aaaは片手で猫のゾロを抱き抱え、サンジの手を握った。
「今日はみんなで食べよう?一人じゃ寂しいでしょ?」
「みゃおっ」
ドロン、なんていう音と共に人間に戻ったゾロは裸のままaaaに抱き着いた。
「aaa…、嬉しい」
「うん」
「今日から三人分か。食費が増えーる」
「サンジ、大好き!」
いじけてリビングに戻るサンジの背中に言った。
「aaaちゃん、おれも大好き」
ひらひらと手を振ったサンジ。
aaaは寝室の電気を消し、サンジを追った。



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