06

「あの子が寂しがってたら側にいてあげてね…」
何度も言い聞かされた、言葉。

スモーカーがローグタウンを任されて早1ヶ月。
初めての、二人そろっての休日だ。
夜から愛し合った二人は、ベッドで寝ていた――。
「…あれ?スモーカーさん?」
――はずだった。
起きたaaaがあたりを見回しても、スモーカーの姿を捉えることは出来ない。
aaaは眠い目を擦りながらリビングに向かうが、そこにも誰もいない。
しんとした部屋が広がっているだけだ。
「ス…モーカーさ…?」
呼んでも自分の言葉が響くだけで、むなしい。
aaaは急に吐き気を覚えて、キッチンのシンクに飛び付いた。
げぇっ、と胃の中のものを吐き出そうとしても、消化されているから胃液しか出てこない。
それでも気持ち悪い酸の味と臭いでまた吐き出そうとする。
「うっ…、げぇ…!」
蛇口を捻って水を出すと、aaaは口の周りを注ぎ、口の中もゆすぐ。
「…はぁっ」
ぽたぽたとシンクに顎を伝うだけの水が落ちて大袈裟な音を立てる。
「スモーカーさん…」
シンクに手を付いて、しゃがむ。
目を閉じると瞼の裏に、母の死んだ時の顔が浮かぶ。
その時のなんとも言えない感情も。
置いていかれたという悲しみと苦しみ、死んでしまいそうな気持ち。
綺麗に化粧をされた母が、優しく笑っていたから――無性に腹立たしい。
「うぐ…っ」
また吐き気がして、シンクに胃液を吐き出した。
「うえぇ…っ」
げほっ、とむせると、無性に涙が出た。
水で口の中をゆすぐと、aaaは何度も目を擦り、ベッドへ戻る。
布団に潜り込み、鼻をすすりながら、眠りについた。

なんだか体が暖かい。
そしてとても気持ちが良い。
スモーカーさんと一緒にいる時みたいだ。
スモーカーさん、帰ってきたかな。
帰ってるといいな。

「ん…」
そんなことを考えていたaaaは浅い眠りから覚醒した。
「悪ィ、起こしちまったか…」
ベッドに腰掛けたスモーカーの温かい手がaaaの額を撫でていた。
体が暖かかったのはこのせいか。
「スモーカーさん……どこに、行ってたんです…」
スモーカーの手に指を絡めながら、aaaはスモーカーを見上げた。
「海賊が現れて仕方なく捕まえに行ってた。これじゃおちおち休めもしねェな」
そう言ったスモーカーに、aaaは自然と笑みがこぼれる。
「仕方ないよ…、みんなスモーカーさんが頼りなんだもん…」
ごつごつしたスモーカーの手の甲、指、掌にキスを送るaaa。
「寂しかっただろ」
「……そんなこと、ない」
心配かけたくないからか意地か、なぜか心とは反した言葉が口をついた。
「バカが。てめェ、目腫れさせて何言ってんだ。おれに嘘つくなんざ、100年早ェ」
スモーカーの手が、指が、aaaの赤くなった目を撫でる。
「ごめんなさい……って、私なんにも悪くない!スモーカーさんが勝手にいなくなるから!」
aaaは上半身を起き上がらせ、スモーカーに反論した。
「悪かったな、寂しい思いさせちまって」
スモーカーはaaaを抱きしめ、頭をぽんぽんと撫でた。
「私の知らないところでどこかに行かないで…」
「あァ…、aaa、どこにも行かねェよ。ちょっと出かけただけで泣くようなやつを置いていくなんざ出来ねェからな」
スモーカーがaaaを抱きしめたまま、ディープキスをする。
「あ…、ん…っ、はぁっ」
いやらしい音を奏でる唇が離れると、aaaは荒い息を吐いた。

「…昔からてめェは寂しがると泣いてたな。いっつもあいつを呼んで泣きやがるから、どうしたらいいかわからなかったぜ」
ふ、と笑うスモーカー。
スモーカーはいつもaaaの母を「あいつ」と呼び、名前は絶対に出さない。
ふぅん、とaaaは覚えていない過去に興味もなく、スモーカーの露出した胸をぺたぺたと触っていた。
「今はスモーカーさんがいるって知ってるから。……ううん、私にはスモーカーさんしかいないから…」
aaaは両手でスモーカーの頬を包むと、顔を近付けて、優しくキスをした。
「今日はずっと側にいてやる」
「ほんと?勝手にどっか行かないでよ」
「あァ」
スモーカーはaaaをベッドに押し倒した。
「……私まだ朝ごはん食べてない」
「おれもだ」
スモーカーはaaaのパジャマのボタンを外し、前を開けさせた。
「…昼ご飯になっちゃうね」
「そうだな。…もう話は終わりだ」
キスをして話せないようにしてから、スモーカーはaaaの下着を外した。


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