01

「喜んでたら一緒に笑ってあげなさい!」
上司の言葉が頭を過ぎる。

天気は快晴、波は穏やか。
軍艦は音を立てずカームベルトを通っている。
「ねぇ、スモーカーさん!」
「……」
aaaの声に耳を傾けながら、スモーカーは葉巻を口から離して煙を吐いた。
「見てっ!」
「みゃあ」
aaaが見せたのは、どこから入り込んだのか知らないが、子猫だった。
「どこから来たのかにゃー?」
子猫の腕を動かしながらaaaが子猫に問い掛ける。
スモーカーは海を眺めたまま、aaaに見向きもしない。
「どこから来たのかにゃー?」
同じことを言いながら、aaaは子猫をスモーカーの顔に押し付けた。
「…やめろっ!!」
スモーカーはaaaから子猫を取り上げた。
「にゃーん」
子猫が一声鳴いて、じたばたと暴れる。
スモーカーが子猫を離すと、子猫はどこかに行ってしまった。
「あっ!」
「……」
スモーカーは気にせず葉巻を二本くわえた。
「馬鹿スモーカーさん!あの猫はね、前着いた島にしかいない猫で、すっごく珍しいんだから!もう見れないかもしれないんだよ!?」
aaaはスモーカーの胸を叩きながら怒っている。
まるで猫がもう逃げて会えないような口ぶりだが、ここは軍艦、逃げ場などない。
探せば絶対にどこかにいるはずなのに、この大袈裟な態度にスモーカーは溜息を吐いた。
「…馬鹿はてめェだ、aaa。てめェ、仕事は終わったのか?」
aaaには少佐としての書類仕事がたくさんあったのだ。
「うっ…!だって、めんどくさいんだもん!」
ふい、とそっぽを向くaaa。
「少佐になったんなら、責任持って仕事をしろ!」
スモーカーはaaaを睨みつけながら怒鳴る。
すると、aaaはびくっと体を震わせて、それから肩を竦めた。
「ごめんなさい…。仕事してきます…」
aaaはどんよりとした空気を漂わせたまま執務室に向かった。
スモーカーはaaaの背中を見送ると、足を甲板へ進めた。
「おい、さっき子猫を見なかったか?」
途中で会った海兵に、そう尋ねた。

「うぅー…終わんない…!!」
ガリガリと音を立てるだけのペン。
期限の過ぎた報告書や何かしらの許可証が束になって置いてある。
少しでも早くスモーカーのもとに行けるように、aaaは一心不乱に手を動かした。

「おい、たしぎィ!」
「あ、スモーカーさん!」
スモーカーがたしぎの部屋に入ると、たしぎはaaaが見つけていた子猫に餌をあげていた。
しかもミルクのようだ。
「てめェたしぎ!何、猫にミルクなんか飲ませてんだ!腹壊したらどうする!」
スモーカーは子猫からミルクを引き離した。
「えっ!?あ…!ご、ごめんなさい!わ、私…知らなくて…!」
たしぎが申し訳なさそうに謝る。
「……この猫、借りるぞ!」
了承も得ずに、スモーカーは子猫を抱えてたしぎの部屋から出ていった。

「…ったぁ!!終わったー!!」
2時間以上は経っただろう、aaaはやっと書類仕事を終えた。
はぁー、と溜息を吐いて、aaaはデスクに突っ伏した。
「…終わったか、aaa」
がちゃ、と扉が音を立てて開いて、現れたのはスモーカー。
「スモーカーさん!……と、子猫ちゃん!」
aaaの視線はすぐにスモーカーの抱えた子猫にいった。
「おら」
スモーカーはデスクにいるaaaに子猫を押し付けた。
「はぁあ…!やっぱり可愛いなぁ!」
子猫に頬を擦り寄せるaaaはにやけている。
「…aaa」
「ありがとう、スモーカーさん!大好き!!」
aaaが笑ってそう言うと、スモーカーは「おれもだ…」と口元を微かに緩めながら返した。
スモーカーがaaaに顔を近づけると、aaaはゆっくりと目を閉じ、スモーカーはくわえていた葉巻を指に挟んで、aaaにキスをした。
子猫が、みゃあと鳴いた。


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