▽ 死んだ魚の目
アンタレスを見て可哀想なくらい顔色を悪くしているレギュラスを見て、シリウスは首を傾げた。
姉と弟の顔をじっくりと見たのは久しぶりである。
「ね、姉さ…」
「レギュラス」
「は、はい」
「これがわかったら褒めてあげるわ」
弁解しようと口を開くレギュラスの言葉を遮り、アンタレスは笑う。
アンタレスが杖を振れば、よくわからない前奏が流れ始めた。それと同時にアンタレスの瞳からハイライトが消失した。まるで死んだ魚の目だ。
レギュラスはハッと目を見開いたがアニメを見ないシリウスにはサッパリである。
「コォートーのー中にはー魔物がすぅむのーたーよーれーるー仲間はー」
「みんな目が死んでるぅううう!!(巻き舌)」
「バレーに懸けたー青春ーでも」
「みんな目が死んでるぅううううう!!(巻き舌)」
歌いだしたアンタレスにレギュラスはみんな目が死んでるとしか言っていない。こんなハイテンションで巻き舌をするなんて予想しなかったであろうシリウスはまた固まった。
見つめあうレギュラスとアンタレスの瞳は真っ暗だ。今度はレギュラスが口を開いた。
「ハーアッブーのーかおーりー聖○たいっし〜」
「イ・ケ・メ・ンすぎってー困っちゃーうぜー」
「しょうとくたいし?誰だそれ」
「世界最古の木造建築の、法隆ぢを建てたジャパンの偉人よ」
「なるほどわからん」
ドジマンガ日和の存在自体を知らないシリウスがずっと置いてきぼりだったことが気に入らなかったらしく口を挟んだ。アンタレスの説明も随分曖昧である。
アンタレスたちマグル同盟やレギュラスの知識はマンガやアニメを鵜呑みにしているものが多いためによく現実のものとのすれ違いが起きていた。実際の世界最古の木造建築はみんなご存じ法隆寺である。
考えることを放棄したシリウスは並んでこっちを見ている姉と弟を見た…がすぐに逸らした。
「どうしてそっちを見るのですか?」
「何もないわよ?」
「なぁ、頼むからさ、」
その死んだ魚の目どうにかしてください。
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