!高校編@
04続編
!WC編終了後
"彼女"が突然姿を消してから一年以上が経った。
だが、彼女の事を覚えている彼等が諦め始めた頃に物語は急展開を迎える事になる。
舞台は大規模な合宿所、キャストは嘗ての同中とその仲間達。
今日この日に、彼等は嘗て無い"人種"と対峙する事になる―――。
△▼△
「・・・やれやれ一時はどうなるかと思ってたけど全て落ち着く所に落ち着いたかな。
後はどのタイミングで出てくるか、だ」
所謂舞台裏とも呼ぶべき場所でほくそ笑むのは黒髪を美しく靡かせた少女。
「ま、あれこれ考えても仕方がないか。
善は急げって言うし・・・じゃあ行こうか、半纏」
こつ、と彼女が響かせた足音がいやに不気味に聞こえた。
△▼△
「キツ過ぎだろ誰だよこの殺人的メニューを組んだのは!?」
うがーっと怒る青峰の背後に迫る不穏な影。
それに気付いた元帝光中レギュラーはさっと青褪めた。
・・・見なかった事にしたい。
「・・・勿論僕だが文句があるのか大輝?」
「うげっ赤司・・・!」
「ん?」
「・・・・・・・・・・・・な、何でも無い・・・」
「そうか」
笑顔なのに背筋が凍るような思いをするのは後にも先にもこの赤い彼だけだろう。
・・・否。
「安心院も確か同じように笑ってたな・・・」
「!」
「っ青峰君!」
「青峰!!」
ピタリ、
「・・・え?」
突然赤司の動きが止まり、青峰の近くにいた黒子・緑間が叫ぶ。
たったそれだけの出来事だったのに体育館はシン、と静まり返った。
「真ちゃん?」
「お、おい黒子どうしたんだよ・・・?」
「青峰っち何言ったんスか?」
「赤ちん・・・?」
緑間、黒子の迫力にたじろぎながらもパートナーである高尾と火神、そして黄瀬と紫原が恐る恐る尋ねる。
だが依然彼等の纏う空気は重い。
「・・・大輝、その名前を簡単に」
赤司がその重たい空気を切り裂くように何かを放とうとした、その刹那。
「おいおい僕の名前って簡単に呼んじゃいけないものになってたのかよ?
酷いじゃないか、其処は平等に気軽に呼べるようにしないと」
「・・・!!」
「!!」
「!?」
赤司の背後には誰もいない。
その筈だ。
なのに声が聞こえる?
何も無い所から突然現れたかのよう―――そんな比喩でもなく本当にそのままの意味で実現可能にする存在を、そのスキルを自分達は知っている。識っている。
だけど、それは。
そのスキルを持つ彼女は、此処にはいない筈―――。
彼等が振り向いたその先にはセーラー服と黄色いヘッドバンドを身に纏った見目麗しい少女と黒子と同様の空色の髪、背中に大きく≠と書かれた服が特徴的な青年の姿が映った。
「え?だ、れ・・・?」
「・・・!?」
「安心院・・・!?」
彼等の内、誰かが彼女の名前を呼ぶ。
驚愕し、まともに声が出ない事を余所に少女―――安心院つゆりが毒気の無い笑みを浮かべながら放った言葉は彼女を知る彼等が思い描いた台詞のどれでもなかった。
「やっほー火神君!
WC編が終わったっていうのに全然会いに来てくれないから僕から遊びに来ちゃったよ」
「・・・!?」
「どーゆうことー?」
「火神君、安心院さんと知り合いだったんですか・・・!?」
「火神、大我・・・!詳しく説明しろ」
いきなり名指しで呼ばれた火神に一斉射撃を喰らうが当の本人も戸惑いを隠せなかった。
「誰だ・・・・・・?
いや!なんだテメーは!
一体いつから其処にいた!?」
『(はっ)そう!其処だ!!』
火神のツッコミに今更ながら気付く。
そうだ彼女の正体だけではなく、その疑問もあった。
「・・・いつからでも、さ。
『腑在証明』アリバイブロックという僕の持つささやかなスキルでね」
『・・・スキル・・・?』
「・・・真ちゃん、どうゆうコト?」
「・・・安心院はいつでも何処でも好きな時に現れる事が出来る。
簡単に言うなら瞬間移動という奴に近い」
「超能力者かよ!?」
バッと振り向く高尾だが緑間の表情は固い。
否いつも固いが今のこの表情は・・・。
「おい黄瀬・・・何なんだコイツは?」
「・・・安心院っちは・・・」
ちら、と一瞬見たのは赤司。
誰よりも彼女との再会を望んでいたのは彼だ。
だが先程から一言も発しないという事実に黄瀬だけでなく元帝光中のメンバーは焦燥感を覚えた。
「ねえ貴女達は一体、」
「・・・確かに。
初めて会う人もいるし。
そうだね自己紹介はちゃんとしようか。
何事も最初が肝心だからね。
否。最初が人外だからと言うべきかな?」
ふわり、と赤司の隣りから突如居なくなったと思えば、次に現れたのは空色の髪を持つ青年の隣りだった。
「!!」
「!?」
「ま、じかよ・・・!?」
「あーちゃん、」
「僕は安心院つゆり。
ただの平等なだけの人外だよ」
艶やかな黒髪が舞う。
空色の彼は動じない。
「因みに後ろの彼は不知火半纏。
ただ其処に居るだけの人外だ。
二人合わせて
『悪平等』ノットイコール―――まあこれも適当に名乗っているだけだけどね」
「・・・・・・つゆり、そんな事はどうでも良い!
今まで何処にいた!?
否、何故帝光中生徒の記憶を全て消して!姿をくらませた!?」
それは最早悲鳴だった。
ずっと黙っていた彼の声は悲痛で苦痛に満ちていた。
彼をよく知る黒子達はその胸中が痛い程伝わって来る。
「・・・」
「答えろつゆり!」
「・・・話せば長くなるんだけど・・・。
まー掻い摘んで話すと、ある少年に僕という存在を『封印』されて『なかったこと』になったんだ」
『封印』『なかったこと』
全く分からない言葉だらけで思考が、展開がついていけない。
「だから、僕が望んでなった展開じゃないんだよ。
―――征十郎君」
つゆりの最後の言葉に赤司は泣きそうな表情を浮かべる。
その様子を目撃した何人かは、あの赤司がと内心で戦慄したのだった。