定位置はバスの窓側 街路樹が
後ろに走っていくのが見えるから
あたたかい午後の日差しで
身体中 平和になる
窓ガラスに小さな蜂が
はりついてもがいてる
足にかわいらしい花粉をつけてる
窓に体当たりして
なんでそんなに必死なんだろう
どこにもいけるはずなどないのに
まだどこかを探しているのだろうか
蜂は力尽きて
座る私の膝に落ちる
死にかけの蜂は針で
私の膝を刺そうとしている
私は手で払おうとするけど
私には手がない
息で吹き飛ばそうとするけど
いつのまにか口もない
からっぽになった頭で
私はクリアに答えを出す
蜂は毒針を刺そうとしているのではなく
卵を産みつけようとしているのだ
ぱっくりと開いた私の腿の中に
一粒ずつ卵を
プヌリプヌリ
生まれたての卵の整列   死にたての
(はちのだんまつま)
私の腿の ピンクの肉の中で
卵から這い出た幼虫は
体をゆすってひそやかにねむっている
まだみえない羽をふるわせている
ああなんて平和
私は再び窓の外を見る
今日もよく晴れている







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