午後の曇り
ドアもカーテンも閉めて
ものと空気の境がなくなる薄暗さにして
その柔らかい闇の底に沈み込み
私の輪郭を曖昧にする

私は毛皮を纏っている
世界にひとつしかない私だけの毛皮 それは
千匹のけものの皮を剥いでつないだ毛皮
このお城の中には千の部屋があって
そのそれぞれに動物が閉じこめられていた
私はそれらの部屋を一つ一つ開け放ち
小さい動物も大きい動物も残らず殺した
柔らかい毛のかたまりたちは従順に倒れていった
私はそれらの皮をやさしく剥いでつなぎあわせ
床をひきずるくらい大きな毛皮をつくった

毛皮をつくろうと思った時は楽しかったけれど
つくり終えた今はとてもかなしい
この世界一の毛皮を自慢しようとしてたのに
私は自分のともだちをぜんぶ殺してしまった
湿った落ち葉を踏みしめたにおいがするその毛皮を纏って
部屋を埋め尽くす本の海に溺れる

ゆめをむさぼる
一日中泣くか眠るかしている
深く薫る千色の毛皮を纏って
部屋には絶えず 古いレコードの音が流れている
レコードのノイズは この薄暗い部屋中に広がる
白黒映画のようなノイズが 薄暗い部屋中に広がる

ゆめの中の私を外側から眺める私
初めて目にする 古い映画の中の私








[*prev] [next#]



back


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -