目覚めると、部屋が冷蔵庫のようだった。

白い息が霧のように。冬の森の幻影が見えた。

壁にあるコルクボードに、霜がついて白くなっている。
テーブルの上の本にも、雪かと思われるくらいに、やわらかく霜が積もっていた。

ベッドから身を起こそうとすると、腕のなかに彼女がいるのに気がついた。

彼女はシーツと同じ真っ白なシャツを着て、静かに横たわっていた。
その口からは、白い息が吐き出されていた。

部屋の中はしん、としていた。
一面に雪が積もった朝のように白くまぶしかったが、やはり凍えるほどに寒かった。

僕は彼女を抱えながら、しばらくぼうっとしていた。
彼女の閉じられた瞼の、綺麗に揃ったまつげは、うっすらと凍ってかたまっていた。
とてもよく出来た人形のようだった。

彼女は規則正しく、深い呼吸をしていた。
白い息がふうっと、僕の胸に当たった。
僕の胸は白く凍った。
彼女の口元に手をかざすと、その息は冷たかった。

彼女の中から、冬が生まれていた。

ふうっ。
僕の手は凍った。

彼女の体は白く冷たく、凍り付いてひとつになった僕らは、冬の湖に浮かぶ雪の彫刻となった。





そんな夢で目が覚めたのは、梅雨の入り口。

ベッドから起き上がると、冷蔵庫に寄りかかって眠る彼女が見えた。

僕は彼女の方へ歩いていった。
彼女は目を覚まさなかった。

彼女の頬に手を触れる。

ふいに冷蔵庫がヴン、と音を立てた。

彼女の首筋はあたたかで、呼吸は平らかだった。








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