「何をしているの」 だいたい予想はつく。彼女の浴槽はもう真っ赤だ。白い陶器の丸いフォルムの浴槽。水をたっぷりはっている。それが赤く染まっている。ローズヒップ・ティーみたいにきれいな赤だ。 彼女は答えない。だまっていっしんに股のあたりをさぐる。ひたすらうつむいてさわっている。辺りにはちゃぷちゃぷと浴槽の水がはねる音だけがひびく。 彼女は月に一度やってくる女の子特有のあれを、早く終わらせようとしている。股からあふれだす血を掻き出している。 「手伝ってあげようか」 彼女は答えない。ぼくは浴槽に手をかけて彼女をのぞきこむ。 彼女の顔は見えるのに、表情は見えない。鉄のにおいが、つんとぼくの鼻を突く。 |