寝室にベッドが二つ。その間に小さいクッション置き場が一つあった。
(これ、何でしょうか?)
(さあ。荷物置き場じゃないか?)
さして気にせずベッドに潜ったナマエとドラコ。今日知り合ったばかりのような二人が同じ部屋で眠るのはやはり奇妙なものだったが、数十分もすれば二人とも夢の世界へ旅立っていった。



翌日、呼び鈴が二人の耳に届いた。
のっそりと起き上るドラコと少し遅れてナマエも眠そうに起き上った。
「おはようございます……何でしょうか?」
「…おはよう」
隣合ったベットから二人で起き上がり、玄関に向かう。

「誰も居ないな。……もし悪戯だったら鼻曲がりの呪いをかけてやる」

迷惑そうに眉をしかめたドラコから目を離して視線を下に向ければ、そこには大きなバスケットが置かれていた。くん、とドラコのシャツの裾を引く。

「…これ、何だと思いますか」

上にかけられていた白い布を取り払えば太陽と同じくらい輝かしい満面の笑みがこちらを見上げていた。眠気なんて早々に消え去ってしまったのは言うまでもない。

「…赤ちゃん、ですね」
「…僕らの目が正しければ…そうだな」
「私達のところだけではないようですよ」

耳を澄ませば騒ぎがそこら中から聞こえてくる。こんなに冷静に受けているのは私達ぐらいかもしれない。…取り合えず寒いために、赤ちゃんを抱いて中に入る。ドラコがバスケットを持って後から部屋に入ってきた。


「手紙が入ってた」
「…手紙ですか」

ドラコはがさりとバスケットの奥から紙きれを取り出して読み始める。ナマエは静かに耳をすませた。


『パパとママへ。私はあなた達の娘です。名前は好きなようにつけて下さい』

「…それだけですか?」
「ああ」
「これも、企画授業のうちのひとつなのでしょうか」

腕の中の小さな命を見つめる。
シルバーブロンズの髪にくりくりの黒い瞳。あー、うーと手を伸ばして自分の顔に手を当ててくるその愛らしい仕草にナマエはそっと微笑んだ。


「こうしてみると、本当に私達の子供みたいですね」
「…、そうだとしたら僕らは17歳で子供をつくった不良夫婦と言うことになるけどね」
「ふふっ…そうですね」

ドラコは横目でナマエを見ながら「名前はどうする?」と尋ねた。


「ドラコが決めていいですよ」
「…僕はいいんだ。君が決めろよ」
「じゃあ今日の放課後、一緒に図書室に行きませんか?」
「図書室なんかに行ってどうするんだ?」
「困った時はそうしろって、ハーマイオニーが言ってました」


あの穢れた血の言うことなんか、と言いかけて、ドラコは口をつぐむ。
何故なら今隣に居るナマエもマグル生まれであったし、それを言えばナマエが悲しむような気がしたからだ。昔の自分からじゃ考えられないような変化に、ドラコ自身面食らって口をつぐんだ。


「ええと、無理にとは言いませんけど」
「…放課後に図書室」
「え?」
「良い考えだ。あそこは割と静かだしね」

ドラコは口をへの字に結びながらもそう言って、朝食に行く支度をし始めた。先に広間へ行ってる。僕は冷めたスープなんて飲みたくないからね。と言葉を並べながらドラコはナマエの腕から赤ん坊を抜き取り部屋を出ていった。分かりにくいが、どうやら気を利かせてくれたようだ。
ささやかな優しさに気付けたことで、ナマエは頬が緩むのを感じた。

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