生徒達が連れ立って学校の外に出るのは別段珍しいことではない。
異様なのは、スリザリンの男子生徒の隣にはグリフィンドールの女子生徒。そしてグリフィンドールの男子生徒の隣にはスリザリンの女子生徒が、互いにぎこちなく、少しだけ距離を空けながら歩いていることだ。

「どこへ行くんでしょうか」
「禁じられた森じゃなければどこでもいいね」

一行が行き着いたのは、ホグワーツ校の北側、禁じられた森のすぐそばにある森番ハグリットの家だった。
正確には、彼の家の隣に建っている見覚えのない石造りの建物だ。

「ようよう!来たな、お前ら!」
「ハグリット……!この建物は一体何?つい昨日まで無かったはずだわ」
ハーマイオニーは皆を代表して尋ねた。
「何って、お前さんらの3ヶ月間の仮家じゃろうが。昨日の晩先生方と石職人達が完成させた」
「一晩で……」


石造りの建物は合計で50ほどあるようだった。
しかしそれらはどれも小さく、入口は大人一人が少し屈んでようやく通れるサイズで、ハリー、ロン、ハーマイオニーと四人で手を繋げば囲ってしまえそうな大きさの家だとナマエは思った。

「諸君。これから諸君らの部屋の鍵を渡す。二人で一つだ。無くしたら二度と入れないものと思い、大切に管理したまえ。なお、この家にはあらゆる保護呪文がかけてあり、当然鍵開け呪文は使えない」

至極不機嫌そうなスネイプ先生から鍵を受け取った二人はさっそく石の家が並ぶ敷地へ足を踏み入れた。玄関の扉に名前が書いてある。
“ナマエ・ミョウジ” “ドラコ・マルフォイ”
の名前の書かれた家は、群の端にちょこんと建っていた。

「驚いたね。僕の家のトイレと同じ大きさの家だ」
ドラコはさっそく悪態を吐いた。
しかしそれも、ナマエのあっと息をのむ声で止んだ。

「わあー!すごい!中はとっても広いです、ドラコ!」
ナマエは歓声を上げながら扉の奥に入っていく。ドラコは肩をすくめ、その後に続いた。


各夫婦に宛がわれた部屋はそれぞれ違うらしい。
二人が足を踏み入れた場所はどこぞの王室のような雰囲気を纏っていた。
リビングにはオレンジ色の灯りが優しく溢れ、値の張りそうな家具を照らしている。決して広々とした空間とは言えないが、二人が落ち着いて過ごすには十分な広さだ。
窓辺には花瓶が置かれていて、そこには可愛らしい花束がささっている。

「僕ららしい部屋だ」
「そうですね」

ナマエがにっこりと微笑めば、ドラコも優しげに目元を緩めた。

「見ろよあれ、マルフォイじゃないみたいだ」
「……ねえロン。僕のこと思いっきり殴ってくれる?たぶんこれは夢なんだ」
「そうだよな。そうに決まってるよな!いくよ、ハリー」
「だめよ、二人とも。ちゃんと現実を直視しなきゃ!」
「いや!ねえ嘘よねドラコお願いそう言って!」


小声の範疇を超えた囁きの方へ目を向ければ、そこにはロン、ハリー、ハーマイオニーと何故かパンジーがいた。ドラコが怪訝そうに眉をひそめた。
窓の外から暫く見ていたようだ。ナマエはクスッと笑って窓に近寄った。

「皆さん、外は寒いでしょう。どうぞ上がって下さい」
「おい!」
「だめ、ですか?」
「………別にダメなんて言ってない」

急に口をつぐんだドラコを見て4人は卒倒しそうになる。あ、あのマルフォイが素直に引き下がるなんて…!ここにきて初めてハリー達はナマエの真の力に圧倒させられたのだった。




「で。どうしてお前までここに居るんだ?」
「私ポッターと夫婦になったのよ」

ハリーが言うには、セリアのもとへ向かう途中にパンジーに「私と結婚しないと呪うわよ」と脅されて、いつの間にか夫婦になっていたらしい。
お茶を出しながら落ち込むハリーの肩を叩く。大丈夫ですよと言葉をのせて、何が大丈夫なのか言った本人にもよく分かっていなかった。


「それにしても、あなた達二人の部屋はなんだか豪華ね。それにとっても落ち着くわ」
「皆こんな感じじゃないんですか?」
「私たちの部屋はもっと普通よ」
「僕らのとこはもっと……隠れ家っぽい」

良く見たらテーブルなどの家具も手の込んだ仕様になっていたりと、品性が漂っているように感じる。ナマエはそれはやはりドラコの気品さが出たのだろう、と思わざるを得なかった。

きっとハーマイオニーのいる部屋には本棚があるだろうし、ロンやハリーが住んでいるところは大きな冷蔵庫や素敵なチェス盤があるんだ。
ナマエは人知れずくすりと微笑んだ。

「この部屋の豪華さはドラコだとして…私の感じは花にしか出てませんね」
「…そうとも限らないぞ」

リビングの端に居たドラコの方に顔を向ければそちらにあったのは木組みの棚。開けば、そこには溢れんばかりのお菓子が詰まっていた。

「これは絶対に君だろ?」
「……私いまとっても素敵な気分です」

お菓子の棚を見ながら目をきらきらと輝かせるナマエにドラコの心臓はドキリと跳ねさせた。
陰鬱と気の重そうな雰囲気が漂う生徒たちの中で、幸先のいい企画授業のスタートをきった二人の会話が途切れることはなかった。

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