大広間に先に行くと言っていたドラコは、家の外の壁に背を預けて私が来るのを待っていてくれた。
「鍵を僕が持ってたんだ。」

ナマエとドラコは連れ立って広間へ向かった。到着したその場は、想像通り、数段賑やかになっている。ドラコはナマエの腕の中で大人しくしている赤ん坊をひと撫でして、顔を上げた。


「朝食の時は君に任せる」
「はい」

丸一日一緒に過ごしただけですっかりドラコの言葉の真意を読み取れるようになったナマエはにっこり笑ってスリザリンのテーブルに向かうドラコを見送った。

「あら、ナマエのところの赤ちゃん凄く可愛いわ…!」
「マルフォイの子にしては優しそうだね」

先に座っていたハーマイーオニーの隣りへ腰掛ければ、向かいでロンが目を輝かせて言った。

「僕んちの子は赤毛なんだ!ナマエの紹介してくれたアナベルも凄くいい子だったよ」
「それは良かったですね」
「あのね、ナマエ。私がプロポーズされた人……誰だか知ってる?」
「マッド・カーティス…でしたっけ」
「そうよ!本当によく知ってるわね…」
「彼がどうかしましたか?」
「ええ、あのね…彼あんまり沢山喋らないの……。あなた何か彼の好きなもの、知らない?」


だってほら、これから3か月も一緒に居るのにお互い何も話さないのはおかしいでしょう?ハーマイオニーは段々と小さくなる声でそう言った。マッドは彼女の言うとおり無口で、だけど端整な顔の青年だ。スリザリン内で言えばドラコやセオドールと並ぶ人気があるらしい。


「大丈夫ですよ、ハーマイオニー」
「え?」
「彼、あなたと同じで本が好きみたいですから」
「それ本当!?」
「ええ」

良かった、と息を吐くハーマイオニーをロンが少しおもしろくなさそうに見ているのを感じて、ナマエは「おや?」と口端を上げた。

「ロン、もしかして」
「おはよう皆」

疲れたようにロンの隣へ腰掛けるハリーに3人の視線は注がれた。時同じくしてスリザリンのテーブルにも疲れた様子でパンジーが腰かけていた。赤ん坊はしっかりとハリーの腕に抱かれている。

「ハリー、何かあったの?」
「…朝からアティが泣きやまなかったんだ…そしたらパンジーまで泣きだしちゃって」

パンジーのは泣くって言うかヒステリーっぽかったけどね、と言って疲れた笑みを見せるハリーのお皿に、ロンは憐れみとお疲れさまの意をこめてソーセージを乗せてあげていた。


「アティって、その子の名前ですか?」
「うん」
「うっわあ…この子ハリーにそっくりだ!」
「あら本当ね!ナマエは、赤ちゃんに名前をつけたの?」
「いえ、まだです」
「マルフォイに世話押しつけられたりしてないかい?」
「ええ。多分食事が終わったら迎えに来てくれると思います」
「あのマルフォイが迎えに!?」

目をまん丸くして驚く3人にナマエは頷いてみせる。朝食の時は君に任せる、という彼の言葉にはそう意味が含まれているように感じていたのだ。やがてそれは、確信とすり替わる。


「ナマエ、もう終わったか」
「ええ」
「行くぞ」

強行軍にも聞こえかねないこの会話だが、ドラコは椅子から立ち上がろうとするナマエの腕から子供を受けとり、片方の手をポケットから出して紳士的に差し出しているのだ。

「ありがとうございます、ドラコ」
「…あそこへ行くんだろ」
「そのつもりです」

肩をすくめてドラコは歩き出す。しっかりと歩調をナマエに合わせているあたり、まるで本物の紳士のようだと見ているものは目を丸くした。ぽかん、と口を開けていたハリー達も数分後には夢から覚めぬような気分で食事を再開するのであった。

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