「私もそっちへ行っていいですか?」
「いいや、だめだ寝てろ」
「だいじょうぶですよ」
「まだ顔が青いぞ。倒れてまたグレンジャーの世話になったらどうする?」

うっとつまったナマエ。
ドラコは小さく笑ってナマエの頭を撫でた。

「どうせ雪はまた降るんだ」
「…分かりました。大人しく待ってます」
「いい子だ」

フィオレにするように額にキスしたドラコは、後ろで黙々と雪玉制作に取り組んでいるフィオレの所に戻っていった。
「…」
恥ずかしくないのかな。
真っ赤な顔を隠すように窓を閉めたナマエは、背を向けたドラコの顔が同じくらい赤い事など、到底知る由もなかった。


***



「完成だ」
「きゃー」

丸く整った雪だるまの頭の上には、フィオレが(ドラコにぶつけるために作った)小さな雪玉が2つくっついている。白くまだ。これを見たフィオレは「ベア!ベア!」といってえらく喜んでいた。
二人の胸は達成感で溢れていた。

「ぺくちゅっ」
「…そろそろ戻るか」

フィオレの鼻水を拭きながらドラコは言う。
フィオレも満足したらしくドラコに続いて玄関に向かった。

「…?どうしたんだ」

しかしその途中に足を止め、思い出したように雪だるまに近寄る。

「ベーア」

自分のしていたマフラーを取り、そのシロクマの首に回す。
帽子も取って耳と耳の間に乗せてやり、
手袋も外して木の枝の先につけた。
そうして満足そうに眺めたフィオレは、雪だるまのほっぺに可愛らしくキスをしてたったっとドラコの方へ向かってくる。

「ぁぱ」
「…お前はあいつに似てる」

首をかしげたフィオレ。
ドラコはナマエに向けるのと同じ、愛おしい眼差しでフィオレを見下ろした。

「――優しいって意味だ。さあ」

差し出された手をフィオレはきゅっと握る。
二人の立ち去った後には、たくさんの足跡と一匹のとても暖かそうなクマだけが残った。

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