はちりと目を覚ましたナマエは、耳を澄ましても二人の声が聞こえない事に気が付いた。
傍に置いてあった水を飲んで喉を潤し、部屋を出る。

「……ドラコ?フィオレ?」

リビングにもいない。ドラコの寝室にもいない。シャワールームにもいない。
どこかへ出かけたのかな。
書置きがあるかも、ともう一度リビングへ行くとどこか遠くでフィオレの声が聞こえた。
思いたったナマエは、窓のカーテンをそっと開けてみた。


「……ふふ」


(いいか、フィオレ!その辺から棒と木の実を拾ってくるんだ)
(ぁーう)
(これは僕の杖だからダメだ!そこらへんの枝を探せ)

しっかりと防寒した二人が、そこそこに大きなサイズの雪だるまを囲んで話している。
窓を挟んで聞こえてくるドラコの指示。
それに従う様子を見せるフィオレ。
屈んで何かを探す仕草を見せたかと思えば、何を思ったのかその小さな手で雪玉を作り始めた。

「…あ!」

小さく声を上げたものの、それがドラコに忠告として届くはずもなく。
フィオレ作の雪玉はドラコの頭に直撃した。

(なっ!フィオレお前何するんだ!)
(きゃっきゃっ)
(服の中に入った!)

鬼のような顔で怒るドラコにものともしないフィオレは、顔を上げてナマエの存在に気付く。
(あーまぁ)
つられてドラコもこちらを見た。
二人とも鼻とほっぺが赤い。
私はくすっと微笑んで、窓を開けた。

「起きたんだな。具合はどうだ?」
「ずいぶん楽になりました。ふふ…楽しそうですね」
「…フィオレがうるさかったんだ」
ふいと横を向いたドラコ。
どうやら照れているらしい。
「今日は寝てていい。フィオレは僕が見とく」
「ありがとうございま、あ」
「?」
ぼさっ
「……」
「ドラコ…あの、大丈夫ですか?」

それは、さっきより大きな雪玉だった。

top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -