薬の作用もあってかいつのまにか眠りに落ちてしまったナマエ。ナマエの額を撫でてからフィオレを抱いて彼女の部屋を出たドラコは、しばらくリビングの椅子に座ってぼうっとしていた。
「…」
今日のは僕の失態だが、おかげで分かった事もある。
何とは言わないが、次からは気を使ってやれそうだ。
こんな時にポジティブなドラコは腰を上げて、自分たちの分のココアを作りに向かおうとする。
「…ぁー」
窓に張り付いて外を見ているフィオレ。
(そうか、こいつ、雪は初めてか)
さっきまでハラハラと降り続けていた雪だが既に降りやんだようだ。
「フィオレ」
呼べばくるりとこちらに顔を向けて、あー!と楽しそうに笑う。
ドラコはフィオレの傍に行って彼女の頭を撫でた。
「雪だ。」
「ん、のー?」
「ああ」
「ぅーぁ、んのーう」
自分の吐いた息で窓がくもれば、その小さな掌でこすって視界をクリアにする。
飽きもせずに繰り返しているフィオレを眺めていると、出所の無い愛おしさが込み上げてきた。
「……よし」
「ぁ?」
「外に行くか、フィオレ」
「!…いぇ!」
「じゃあまずは武装だ」
飛び上がって喜ぶフィオレ。ドラコは一度ナマエの部屋に視線を向けたが、今日は彼女は休ませてあげようと心に決めて武装、ならぬ防寒対策に思考を移すのであった。
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