「おい、フィオレ、暴れるな」
「ぉぉーぁ」
「分かった分かった。後でお前の分も作ってやるから」

出来上がったココアをかき混ぜて一口飲む。
「熱!」

火傷してヒリヒリする舌を空気で冷やしながら慌ててキッチンに戻る。こんな熱いの飲ませられるか。ドラコはそこへ少しミルクを足して、カサ増ししたココアが零れないよう細心の注意を払いながら寝室へ戻った。
「ぅきゃう!」「あづ!」
後ろから突っ込んできたフィオレによってその努力は無駄に終わったわけだが。白い靴下に茶色いシミがついたことは忘れ、ドラコは何ともない顔でナマエのベットの脇のテーブルにそれを置いた。

「ドラコ?今…もしかしてこぼしました?」
「まさか、この僕が溢すわけないだろ」
「そうですか」
「ほら、飲むだろココア」

ドラコはさりげなく眼鏡を遠くに避けながら、丁度良い量に減ったココアを勧めた。
ナマエはカップに口をつけてあたたかなココアを喉に流し込んだ。
「美味しい、です」
幸せそうにそう言ったナマエ。
ドラコは得も知れぬ満足感を感じつつ、ナマエの顔色が酷く悪い事を気にかけた。


「…悪かった。」
「え?」
「君の具合が良くなかったこと気付いてあげられなくて」

昨日も一昨日も、ナマエはいつも通り元気だったように思う。
僕は誰よりナマエを見ているつもりで実は全然見ていなかったのかも、と正直ショックすら感じる。
項垂れるドラコの前で、ナマエがくすりと笑った。

「ドラコが気付かなくても無理ないですよ」
「…僕はこう見えて君のことはちゃんと見てるつもりだ」
「ああ、いえ、そうじゃなくてですね」

困ったように頬をかいたナマエがぼそりと告げた。

「生理、なんです」
「…は?」
「だから…その、風邪とかじゃなくて」

バタンと開いた扉からは寒そうにしたハーマイオニーが駆け込んできた。

「はいナマエ、マダム・ポンフリーから生理痛に効く薬貰ってきたわよ!」
「ありがとうございます…助かりました!」
「こういう時はお互い様よ。何にせよ、大事が無くてよかったわ」

マルフォイが血相変えてうちに来た時はどうしようかと思っちゃった。そう笑ったハーマイオニーはふとドラコを見て首をかしげた。

「マルフォイ、あなた顔が赤いわよ」
「う…うるさい!」

(何で察せなかったんだ。ちょっと考えればすぐに……ああ)
結局ドラコはハーマイオニーが帰って行った事にも気が付かずに暫くずっと唸り続けていたとか。

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