いくつかある建物の中で、ドラコとナマエの部屋は4つめの建物だったために、ハーマイオニー達の部屋を出てからは少し距離があった。
その距離を走りながら、ドラコは彼女に説明を始める。


「ナマエが急に倒れたんだ」
「何ですって!?」
「急いでベットに寝かせたが…顔は真っ青で、本当に具合が悪そうだった…。彼女、グレンジャーを呼んで来てくれと僕に頼むんだ」
「あなた、よく見たら薄着じゃない」
「うるさいな!焦って飛び出してきたんだよっ」
「なるほどね。とにかく、ナマエが心配だわ」


ドラコは部屋の前に行き着くとポケットから鍵を取り出して扉を開けた。(こんな時にでも施錠に気を配るなんて、とハーマイオニーはひそかに感心した)


「ナマエ!グレンジャーを連れてきたぞ!」
「…ドラコ…」
「どうしたのよ、ナマエ!」
「あ、ハーマイオニー…ありがと、ございます…来てくれて」
「いいのよ!そんなの。それより」

ベットに近付いたハーマイオニーはナマエの足もとで絵本を抱えていたフィオレをドラコに預けた。
ナマエは眉をきゅっと寄せ、辛そうにハーマイオニーを手招いた。
つられて近寄ったハーマイオニーの耳元に口を寄せて何かを囁くナマエを、ドラコは始終落ち着かない表情で見つめている。


「あら、何だ、そうだったの!」
「…ごめんなさい」
「謝ることないわ!分かった。私に任せて!」

にこりと笑ったハーマイオニーはくるりと振り返るとドラコに向かって人差し指を突き出した。

「いい?ドラコ。よく聞いて!」

ドラコはハーマイオニーにファーストネームで呼ばれたことなど頭にも過らず、真剣に頷いた。

「ナマエに温かいココアを作ってあげてちょうだい」
「…ココア?」
「そうよ。それから部屋をなるべく暖かくして、ナマエの腰をさすってあげてちょうだい」
「腰?何で」
「じゃあ宜しく頼むわね」
「おい!」

再びコートを羽織って部屋を出て行ってしまったハーマイオニー。
でも、アイツの事だから何か考えがあるのだろう。
思い直したドラコはフィオレを小脇に抱えたままナマエに向き直った。


「ごめんなさい…ドラコ、せっかく休みの日なのに」
「何言ってるんだ!君の体が大事だ」

待ってろ、すぐに作ってくる。そう言ってキッチンに駆け込んだドラコは実は生まれて初めてのココア作りに挑戦することとなった。

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