フィオレが失踪したあの日から1週間程経ったある日。朝からしんしんと雪の降る、凍てつきそうな日曜の事だった。

「おい!!いるか!?おい!」


暖炉の前で本を読んでいたハーマイオーニーは、扉の向こうからの呼びかけに怪訝そうな顔を持ち上げた。(…この声、マルフォイ?)
ハーマイオニーが腰を上げるより先に立ち上がったのは、パートナーのマッドだ。
彼もまた同じように読書に耽っていたのだが、先程読み終えたらしく今は紅茶を飲んでいた。


「私が出るわ」
「いい。それより、ジャックがぐずってる」

ジャックというのは、彼らの性格に似た静かな子供だった。マルフォイの声と扉を叩く音で起きてしまったらしい。
しかし、マルフォイがこの部屋に何の用だろう。
マッドと仲がいいという話はあまり聞かないけど。
ハーマイオニーはジャックをあやしながらぼんやりそんな事を考えた。



***


マッドが扉を開けると、鼻の頭を真っ赤にして、自慢のシルバーブロンズに雪を薄く積もらせたドラコが立っていた。
ドラコはマッドを見て驚いたように言う。

「マッド・カーティス?お前、グレンジャーと結婚してたのか」
「ああ」
「それは知らなかった。……って今はそれどころじゃない!!グレンジャーはいるか!?」

ドラコの表情が急に切羽詰まったものに変わる。
マッドはその様子をしげしげと眺め、それから部屋の奥に向かって呼びかけた。


「グレンジャー。マルフォイが呼んでる」
奥から声だけが「何ですって!?」と返ってきて、しばらくすると赤ん坊を抱いたハーマイオニーが玄関に姿を現した。


「マルフォイ、あなた私に一体何の用?」
「僕だって好きで君の所に来たわけじゃない。というか、こんな事態じゃなきゃ来るもんか!だいたい」
「はいはい分かったわよ、それで?何の用なの?」
「!!……来てくれ。ナマエが大変なんだ!」

必死の顔でそう頼んだドラコを前に、ハーマイオニーとマッドは顔を見合わせた。

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