ドラコは廊下の先を曲がってきたハリーに大声で尋ねた。
「おいいたか!」
数秒間が空いて叫び返される。
「こっちにはいないみたいだ!」
ドラコが焦りを隠すこともせず再びフィオレ探しに戻ったのを見て、ハリーは後付けるように面食らった。たぶん今学期に入って、いやホグワーツに入学して以来初めて、マルフォイと「口喧嘩」以外の言葉を交わした。これを言えば奴が全力で否定するのは目に見えているので言わないけれど。


「…よし」
ハリーは気合を入れて、フィオレ探しに専念した。






「フィオレー!フィオレー!」
「ちょっと、ロン!そんな所にいるはずないじゃない」
「そんなの分からないじゃないか」
「分かるわよ、だってあなた、それゴミ箱よ!」
「念の為だよ!…フィオレー!」
「もう勝手にやってなさい」

ハーマイオニーは今度は空っぽの壺に向かって叫ぶロンを放って歩き出した。慌てたように追いかけるロンも、もう少し真面目にやろう、と密かに気合を入れ直した。






「………我輩に、何かご用ですかな」
「いえ、生徒の子供が一人行方不明になったようですので、ご様子を伺いに」
「それはそれは」
スネイプはマクゴナガルに向かって、頬をピクと引きつらせた。

「生徒達は今どうしているのですか?」
「解散させました」
「解散?」
「授業になりませんのでな…。全く、校長は何を考えておられるのやら」

苛立たしげな声も、いつも程の迫力はない。マクゴナガルはそれに気付いてか敢えて答えることはせず「そうですか。では失礼しました」と静かに部屋を出ていった。スネイプは少しの間頭を抱え、やがてマントを翻すと、彼女を追うように地下室を出たのだった。






「なあフレッド」
「何だいジョージ」
「この間考えた新商品、あー…なんて言ったっけ?」
「"タマムシ目くらまし弾"」
「そう、それ。ソレの改良余地がまだあってさ…」

決してサボっている訳でなく、細長い体を腰から曲げてベンチの下をのぞき込んだり、使われていない教室の扉を片っ端から開けてみたりと、せわしなく動き回りながらの会話である。
探すのを手伝うと言ったのだ。捕獲完了の報告があるまで、かわいい"妹分"のお役に立とうじゃないか!双子も、当然のようにフィオレ探しに一生懸命になった。



怪我はしていないか、
泣いていないか、
怖い思いはしていないか、

ふと気を緩めればすぐに悪い方へ走る思考にナマエはストップをかけた。ダメ、ダメ。悪い事ばかり考えているとそれが現実になってしまう。良いことを考えよう。そうだ、フィオレが無事に見つかるように祈ろう。ああ、それはさっきからずっとしてることだったっけ。でもそうする他に考えることはないのだから仕方ない。どうか…―――どうか、無事でいてください。

みんな、あなたを探してくれているんですから。

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