辺りの騒音も誰かの焦った声も、わたしの耳からはシャットアウトされて、ゆっくり崩れるドラコだけがそこにいた。
「、ぱぁ?」
「……!」
フィオレの声がわたしを現実へと引き戻した。
目の前には血色の失せたドラコの顔があって、やっと、護られたことに気付く。
「ぁ、ど――――ドラコ!!」
「ナマエ!マルフォイを医務室へ運ばないと」
「退いていたまえ」
黒いマントを翻したスネイプ先生はドラコを抱き上げて歩き出した、私も、無意識に後を追う。背中からザビニのうろたえた謝罪が追い掛けてきたけど、この時ばかりは、どうしても、応える気にはなれなかった。
「どうしてマルフォイの奴避けられた呪文にわざわざ辺りに行ったんだ」
「…〜あなたってほんっとうに馬鹿ね!」
「マルフォイが避けたら間違いなくナマエに当たってただろうね。それにフィオレにも」
解散の指示を受けた教室でハリー達は未だに言葉を交わし合っていた。でも!とロンは口をへの字に曲げる。
「あのマルフォイだぜ?きみだって言ってただろ?アイツはヘタレイタチだって」
「そうよ、今だってそう思ってるわ。卑怯で狡いヘタレイタチって」
「だったら」
「…変わるのよ」
「?」
認めたくないと言わんばかりのハーマイオニーから、ハリーが言葉を引き継いだ。
「たぶん…ナマエの前だと、マルフォイは強くなるんだ」
そう。ハリー達には相変わらずな接し方のマルフォイだったが、それがナマエの前だと一変して紳士的に変わる。
ナマエはマルフォイの好む純血でもなければスリザリンでもないのに、という疑問はそれを目の当たりにしている皆が思っていることだ。でも、
マルフォイがナマエを大事に想っていることだけは確からしいから。
「取りあえず僕らは、遠巻きに見守るしかないね」
「…そうね。はぁ」
ハーマイオニーは大好きなナマエが、大嫌いなマルフォイに盗られたような気がして堪らず肩を落とした。
二人の口からも、もしナマエに何かあったら僕らがマルフォイを!なんて台詞は、あり得ないと解かっているだけに流石に出てくることはなかった。
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