ナマエは尚もさまざまなところに衝突しながら部屋に転がり込んだ。い、いま…何が!とにかく落ちつくんだ。ゆっくり深呼吸して。
わたしは火照って恐らく真っ赤であろうほっぺたに手を当ててみた。
予想通りほかほかで、湯気でも出てるんじゃないかと思ってしまった程だ。


眼鏡が、壊れててよかった…。


あんな至近距離(たぶん)でドラコの綺麗な顔を見てしまったら、きっと今以上のことになってしまうもの。

「…それにしても」


ドラコはどうしてイキナリあんなことをしたんだろう。やっぱりそれなりに怒ってたのかもしれない。だからあんな風に私をからかったんだ…!

ドラコは紳士だけど、一日中お守りをしているんじゃ嫌になってしまうだろうし。困った…こまったなあ。何だかわからないけど、ドラコに嫌われるのはとっても悲しい事のような気がしてきた。


「ナマエ、もうそろそろ行かないと」
「ドラコ!」
「な、…なんだ?」

「か、か…かたもみしてあげましょうか…?」



僕はその瞬間フリーズした。彼女のあまりに真剣な表情とアンバランスなその申し出。一体どういう事だと考えるまでもなかった。恐らく、今回のことを負い目に感じたこいつの、最終的に行き着いた、いわば"恩返し"なのだろう。


「プッ……クク」
「え…」
「馬鹿だな、ナマエ。僕が本当に怒ったと思ったのか」
「…怒って」
「無いにきまってるだろう?でも、まあ肩もみ位ならさせてあげてもいいかな」


どこまでも真面目な彼女の、必死な申し出。正直肩なんて全然こってないんだけど、受け入れてあげようと思ったのはやはり惚れた弱みという部分あってこそだろうな。
肩越しに伝わる暖かさに、ドラコはそっと口元を上ずらせたのだった。

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