現在ホグワーツで実施されている企画授業。その中でひと際異彩を放っていたのは勿論のことナマエとドラコであった。
二人とも特別な事をしているわけでなく言われたことを只行っているだけなのだが、この異例な状況下で「言われた通りのことを行」えている生徒は稀なのだった。また、優しくおおらかな雰囲気のナマエとスリザリンを代表するような狡猾さで知られているドラコの珍しい組み合わせも、人目を引かせる原因だった。


「あ、見てください。ドラコ」
「名前辞典?こんなのに頼るのか」
「そのつもりだったんですけど、今ざっと見てもあまり芳しくないというか」
「当り前だ。こういうものは発想に限る」
「そうみたいですね」

夕方の図書室はひっそりとした温かさを孕み、ドラコとナマエは長机の端の席に腰を下ろした。もちろん子供はナマエの膝の上に座っている。

「要望は無いのか」
「そう、ですね…優しいイメージの名前がいいです」
「優しい……か」


ドラコが窓辺に視線を落とすと丁度中庭が垣間見える。立ちあがって、窓辺に近づいた。

「fiore」
「…え?」
「フィオレ、なんてどうだ」

花という意味のその名前にナマエは目を輝かせて頷いた。

「フィオレ…!素敵ですね」
「今日からお前の名前はフィオレだ…わかったな」
「、あーぅ」

ナマエの膝の上でフィオレは嬉しそうに笑い声をあげる。彼女の頭を優しく撫でるドラコの姿を、
ナマエはやはりどこはかとなく嬉しそうに見つめるのだった。


「ナマエ、もし…明日君に 用事がなければの話だけど」

ドラコは座っているナマエと視線が合うように屈む。言いずらそうに動かしていた視線をやっとナマエに合わせて口を開いた。

「僕とホグズミードへ行かないか」


照れるようにしてまた視線を落とすドラコを見てナマエは不思議な感覚に陥った。ほっかりと温かい幸福感が胸を満たす。
一度こくりと頷けばドラコが嬉しそうに目を細めるので、ナマエの心臓はまたひとつトクリと高鳴ったのに気付いた。


「(へんなの…どうしたんだろう)」
「どうかしたのか」
「あ、何でもないです…少し風邪をひいたのかも知れませんね」
「早く帰るぞ。今日は寝ろ…フィオレは僕が寝かしつける」
「ありがとう、ドラコ」


その感情は次の瞬間には不確かなものになって、ナマエはただ首をかしげるばかりであった。

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