初対面で睨まれ、再会して5分で本性をさらされ、今や気軽に死の呪文をぶっぱなされるような仲になったトム・リドル君。
彼は今、やや興奮した面持ちで廊下を歩いている。

「16歳になると同時に解放される力か。興味深い……実に、興味深い」
「楽しそうで何より何より」
「君は楽しみじゃないのかい?」
「魔法使いになるのが?そりゃ楽しみだけど、不安もおっきいよ」

不安?何故?
ときょとん顔のリドル。

「だってもし、明日になっても私は私のまま、魔法が使えなかったら?」

せっかくこんな素敵な場所に来られたのに。
両親の力すべてを奪ってまでここへ来たのに。

「もしそうなったら私」
「君はバカか」
「なん、」
「ダンブルドアが君は魔女だと言ったんだろう」

言ってからリドルは、失敗したと言うような顔をした。

「ダンブルドア先生が言ったから…?」
「……………つまり彼がそう言ったなら、そうだということなんだろ。ダンブルドアは食えないがそういった面では信頼のおける目を持ってるから」

リドルは非常に面白くなさそうだ。
狸ジジイとか言ってたからたぶん好きではないんだろうけど、実力は認めているということか。
それにしても、私はくすりと微笑んだ。


「リドルも、慰めてくれることがあるんだね」

隠し扉をくぐりながらからかうが、リドルは顔をしかめただけで特に何も言うことはなかった。

***

談話室には、まだちらほらと生徒が残っている。
私はふわりとひとつ欠伸をしながら、女子寮へ続く階段へ足をかけた。

「じゃあリドル今日は色々ありがとね。おやす、」
「何言ってるんだい?」
「え?…、んお!?」

突然腕を引かれ、リドルの腕の中に抱き込まれる。耳元で、私に向けられることが到底信じられないような甘い声で囁く。

「今夜は寝かさないよ」

ゴチンと固まった私。
な、何いってんだこいつ!こんな場所でこんなことしたら……
談話室でたむろっていた生徒の方々は明らかにざわめき、(あ、遠くで悲鳴が聞こえた)、リドルの手が私の手に絡むと、それはもうすごい勢いで談話室から人がはけた。
リドルはふうとため息をつき、ソファに腰かける。
呆然と固まる私を見て首をかしげた。

「何突っ立ってるんだい?」
「いや説明求む!!」
「何の」
「何のって今のやつ!え!なん!なん??」
「ああ」

なんでもなさそうに言うリドル。

「どうして僕が君のひららかな身体を抱き締めたのかってこと?」
「そうだよ!!あと貴様は許さんマジで」
「そうすれば容易く人払いができると思ったからね。現に、いなくなったろう?」

たしかに人っ子一人いなくなった。
でも不思議だ。
普通そういう場面に出くわしたら興味津々にこっそりこそこそ影から見つめて楽しむもんなんじゃないだろうか。お年頃ならなおさら。

「彼らはここで僕らを観察するより、部屋に回って噂を広める方が得意なのさ」
「ふーん。……で、でもリドル、私とうわ…噂になんかなっちゃったりしたら」
「気にしないよ」
「えっ??」

リドルは柔らかく微笑んだ。

「さっき丁度あそこにストーカー並みの女の子がいてね。君はいい虫除けになった」
「………」

リドルの行動には十二分に気を付けようと心に決めた(ギリ)15の夜の話である。
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