「ほほ、もうすぐ来る頃じゃとは思っておったよ」


私達二人を部屋へ招き入れたダンブルドア先生。
リドルはいつもの優等生面に戻って自分の仮説をつらつらと述べているが、てめー私に死の呪文ぶっ放したこと絶対忘れないからな。


「つまり彼女の両親は魔力を分け与えたのではなく、根こそぎ奪われた。彼女に」
「……は?」リドルの言葉に思考が停止する。

「彼女は、スクイブだったのではありませんか?」

部屋に小さな沈黙が訪れる。
やがて両手を膝の上から上げたダンブルドア先生が、彼に向かって拍手を送った。
ついていけていない私だったけどとりあえず一緒に拍手した。でもこれ何の拍手なの。リドルに足を踏まれた。理不尽だ。

「正解じゃよ、トム。君の推理はおおよそ正しい」
「おおよそ…ですか」

「あの、すいません、」私は意を決して口を挟む。つってもこれ私の話なんだけど。
「先生……私あまり状況が把握できていなくて。スクイブって?……根こそぎ奪ったってどういうことですか?」

ダンブルドア先生は少しだけ困ったような顔をして私を見た。

「二人からは内緒にしてくれと頼まれていたことなんじゃが、こうなっては仕方あるまいな。二人とも、そこに掛けなさい」

言われた通り、私とリドルはソファに腰を下ろす。
机のそばにいた大きな鳥の喉元を撫でて、ダンブルドア先生は口を開く。

「ナマエ、君は生まれたとき魔力を有しておらんかった。魔法族の家系に稀に起こる突然変異で、そういったもの達をスクイブと呼ぶ」
「スクイブ……」
「君の両親は自分達の娘にも、魔法の素晴らしさ、その奇跡を体験させてやりたかった。そこで自分達の魔力を娘に分け与えることにしたのじゃ」
「そんなことが可能なのですか?」
リドルが身を乗り出して訪ねる。

「可能か不可能かで問われればそれは可能じゃよ。当然魔法使いの腕にも関わるが、その魔力の質や、そのものに流れる血にも関係してくるがの」
「つまり、血縁者であれば確率は高いということですね」
「その通り。しかし成功の確率は高いとはいえん。なんせ腕がいるんでの」
「でも、彼女の両親はそれを成功させた」

ダンブルドア先生は深く頷き、空のグラスにラム酒を少し注いだ。

「しかし彼らには一つの誤算があった。ひとつは、ナマエ、君の中にごく僅かにあった魔力の存在に気がつかなかったことじゃ。しかも君は成長するにつれて魔力が劇的に育っていくタイプじゃったようでの」
「え、じゃあ、結局何もしなくてもよかったってことですか?」
「まあ、そういうことじゃな」

リドルがちらりと私を見る。
さすが君の親だけあってせっかちだね、的なことを言われてる気がする。反論はできないのが悲しいところだ。

「そこへ、君の中にあった魔力は流れ込んできた二人の魔力と混ざり合い、爆発的に膨張した。立ち会っていたわしが君の魔力に蓋をした頃には、二人の魔力は根こそぎ君に吸収されていたというわけじゃ」
「……あり得ない。君はダイソンか」
「誰が掃除機だ……。」
リドルらしからぬ冗談にもこんな腑抜けたツッコミしかできない程度には、私もショックを受けていた。

何もかも、想定外。
頭が全然追い付かない。

「じゃあ、私、お母さん達の魔力を全部奪ってここにいるんですか?お母さんたちは、じゃあ、……もう魔法が」
「喜んでおったよ」
ダンブルドア先生は私の不安を見透かしたようにそう言った。

「自分達の魔力が丸々君に注ぎ込まれた後、君のご両親はお腹を抱えて笑い転げて、それから嬉しそうに、君を抱きしめたのじゃ」


私はそれを聞いて、うっかり泣きそうになるのを堪えた。
ホグワーツに魔法使いに、今日一度で劇的に変化した私の世界で、二人は、唯一何も変わらない愛情を思い出させてくれたのだ。

私とリドルは先生にさよならを言って研究室を出た。
帰り際にリドルは、明日私の買い物に付き合うようにと先生に頼まれて快くOKしていたけど、その内心は私にも易々と図り知れた。

(せっかくの週末をどうして君のおもりなんかして過ごさなきゃいけないのか、僕に教えてくれる?)
(猫じゃなくて狼でもかぶってみたらいいんじゃないかな、うん)
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