「汽車の旅はどうだったかね?」
「ええ、まあ、色んな事がありまして…」

そう告げるとダンブルドアさんは「それは興味深い」と微笑んで何度か頷いたが、深く尋ねることはしなかった。
その代わりに、きらきらと少年のように輝くブルーの瞳をこちらに向ける。


「さて、ナマエ。君には色々と説明せねばならんな」
「…よ、よろしくプリーズです」
「では。学校までの道がてら、お話しようかの」

ダンブルドアさんは思い出を語るようにどこか楽しげに話し始める。私は静かに、それに耳を傾けた。



「君のご両親とは、長い付き合いじゃ」
「!!…それじゃあ」
「二人とも、魔法使いじゃよ。君には言うておらんかったようだが…二人は優秀じゃった」
「そ、そんな」


うちのパパとママが魔法使い?そんなの信じろと言うのが無茶な話だ。だって、あの二人は…私の見た限りふつうの、あれ…バカップルだ。
朝はおはようのモーニングキッスから始まり「いってらっしゃいあなた」「行ってきますマイハニー」でハートを撒き散らしちょっとした公害騒ぎになりかけたほどの強者である。
ちなみに「おかえりなさい。ご飯にする?お風呂にする?それとも(略)」は、うちに泊まりに来れば毎週欠かさず見られる名イベントとなっている。…うんざりしちゃうよねホント


「二人は純血だったが、二人とも、マグルとその世界を愛しておった。…何故かと聞かれれば、そこにさほどの理由はなかろう」
「な…ないんだ!」
「二人とも変わっとったからの。しかし…良い生徒じゃった」

ダンブルドアさんの目が優しげに細められる。私は、ホグワーツのローブを着て廊下を歩く二人の姿を想像して少し笑った。



「あの二人は君に、魔法で全てこなすのではなく自分でやりぬく力を身につけてほしかったようじゃ」
「(ああ…白アリ退治とかね)」
「マグルの世界に住み、彼らと同じ生活をすることで君にそれを覚えさせようとした。ナマエ…君は魔法を使ったことがあるかね?」

私は首を振った。
以前、屋根の上から木に飛び移りたいという突発的な試みを実行して痛い思いをしたことがあるが、その時だって魔法は私を助けてくれなっかった。


「じゃろうな。理由はひとつ、君は生まれる前から君自身の体に魔法をかけられておった」
「魔法…?生まれる前からって、どんな」
「『私たちの娘が11歳になるまで魔法に関する全ての事象を拒絶する』と。君の誕生日は明日じゃったろう」
「そうですけど…でも私11歳なんてとっくの昔に過ぎちゃいましたよ」
「そこが不思議なところでの、ナマエ」

ダンブルドアさんはやわらかな芝で覆われた丘に目をやって続けた。

「どうしてかその魔法は11歳の時にも、その翌年にも、そのまた翌年にも作用せんかった。二人は頭を抱えてすっかり悩み込んでしまっての。わしに助けを求めてきたのじゃ。自分たちが娘の魔力を永久に奪い去ってしまったのでは、と。だからわしはすぐに君に会いに行った」
「……あああああ!!!」
「思い出してくれたようで何よりじゃ」
「そ、そうだ!14歳の誕生日…!」


パパとママの古い友人が来るから、と前置きされていた私がその日会った訪問者が、たしかに、このダンブルドアさんによく似ていた。というか、100パーセントそうだ。
すぐに帰ってしまったから記憶に残るほどの会話もしていないはず。

「その時わしは一目で君の内なる魔力の巨大さに気付いた」
「えええ!」
「そう驚くことではなかろうて。14年間生きてきた君と共に成長している魔力が、1oも外に漏れずに内側に蓄えられておったんじゃから」
「じゃあ…要は、生まれる前にかけられてたって呪文が効きすぎてたんですか?」
「理解が早くて大変結構。その通りじゃよ、ナマエ」
「なるほど…まだ、信じらんないけど」
「明日が来れば分かる事じゃ。あまり思いつめるでないぞ」


つまり今日の真夜中を過ぎれば私は魔法を使えるようになると、そういうわけか…。とても信じがたいけど筋は通ってる。
突然突きつけられた壮大な物語に思考回路はショート寸前!だったが、巨大な石の建造物を目前にして、私の頭からは色んな事が吹っ飛んでしまった。な、なななな何このお城!



「す、ご…!ねえ、ダンブルドアさん、ここもしかして」
「気に入ってもらえたようじゃな」

「わしらは君を心から歓迎しとるよ。ホグワーツ魔法魔術学校へようこそ、ナマエ」


ダンブルドアさんは恭しくお辞儀をすると、私にウィンクを一つ送ってくれた。そういえばダンブルドアさんはホグワーツの先生なんだから、正式に先生と呼ぶべきなのかも。
思い直した私はダンブルドアさ…先生、にお辞儀を返した。

「こちらこそ。どうぞ、よろしくお願いします。ダンブルドア先生…!」


まだ不安だらけで解決してない事も山積みだけど
(楽しんで、学校生活が送れそうでなによりだと、そう思ったのであった。)
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