「着いたよ、起きろ」
「ゲフッ…な、何も叩かなくても」
「うたたねしてるのが悪い。…ほら、行くよ」

何だか私すっかりリドルの所有物みたい。そう零せば「みたいじゃなくて、そうなんだよ」とリドルは鼻で笑った。
汽車を降りると、人でごった返すホームの先にダンブルドアさんを見つけた。目が合うと微笑んで手招きされる。


「リドル。私ちょっと行ってくる」
「行くってどこに」
「ダンブルドアさんが呼んでるから」
「…」私の視線を辿ったリドルは、一瞬嫌そうに顔をしかめた。


「あんな狸ジジイの所へなんて行かなくてもいいと思うけどね」
「え、何リドル。ダンブルドアさん嫌いなの?」
その問いには答えず、リドルは私の襟元に視線を落として溜息を吐いた。

「変になってる」
「え?」
「襟、直すからじっとしてろ」
「ん」

私の襟を直すリドルの手がたまに首筋に触れ、それが冷たくて驚いた。でもリドルが冷え性っていうのは何となく納得だったから、真冬にでも手袋をプレゼントしてあげようかな。うん。気が向いたら。

「できた。君は少しくらい女性としての自覚を持つべきだ」
「ありがとう。自覚なら持て余してますわ、うふ」
「キモい」
「私もそう思った」


今思えば、この場所においてトランク2つと人が2人突っ立ってる状況はかなり邪魔だ。私はリドルに「じゃあ後でね」と告げて早急に立ち去ろうと一歩踏み出したが、リドルは腕を掴んでそれを引きとめた。


「…何?」
「この後大広間で組み分けがある」
「組み分け?なにそれ」
「ホグワーツで生活するためにやらなければいけない儀式だよ」

ぎ、儀式か…。生贄とかそんな生々しい感じじゃないことを期待するが。いかんせん魔法界の知識なんてゼロに近い私に断言はできなかった。
そんな私の不安など露知らず、リドルは話を続ける。

「次、また君の襟首を直す時があれば」
「…?」
「その時は緑のネクタイも一緒に拝める事を期待してるよ」

それどういう意味?と質問を投げかけるより早く、リドルは私の前髪を持ち上げて額に軽くキスをした。…何だこいつ。きっと今の私は不可解なものを見る顔になってるはずだ。

「…つまらない反応だ」
「そういう割には満足そうな顔に見える」
「まあね。君が真っ赤になって恥じらう姿なんて見れたものじゃないだろうから」
「リドルって心臓抉る達人だよね」
「ありがとう。…それじゃあ、ナマエ」

スリザリンの談話室でまた会おう。去り際に意味深な台詞を残して、リドルはさっさと人ごみの中に消えてしまった。
それにしても初めてリドルに名前呼ばれた気がするな。
そんな事を思いながら、私もダンブルドアさんのいる方へとトランクを引っ張って足を進めるのであった。


(ほほ、ナマエ、トムとだいぶ打ち解けたようじゃの)
(トト、トム!?ちょ、ダンブルドアさん塵にされちゃうよ!?)
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