「リ、リドル…」
そうだった完璧にこいつの事忘れてた。隣でジェレミーが「ナマエ、あなた彼と知り合いなの!?」とまたもやビックリしていたけど、もはやそれどころではない。だってリドルの目が絶対零度領域…
「ご、ごめ…忘れてて」
「別に気にしてないからいいよ」
「(嘘だっ)」
「それより君、荷物がまだ僕の所にあるんだけど…もしかして持って来た方がよかったかな?」
誰こいつ!
「とと、とんでもない!自分でいきますからっ!ひー」
「そう。じゃあ行こうか」
エスコートするように差し出された手をまじまじと見つめて、それからリドルに視線を移す。無言の威圧を受けて、恐る恐るその手に自分の手を重ねた。
リドルは一瞬満足そうに目を細めて、それからジェレミーに微笑みかけた。
「それじゃあ、彼女を少し借りるよ」
「…え、ええ」
ジェレミー!!「ちょっと待ちなさい!その子は私のよ!」とか期待してたのに!ちょ、ジェレミー!?
心のSOSは誰にも気づかれず(例外1名を除く)私はリドルによって閉められたコンパートメントの扉をとても残念な顔で見つめていた。
「…君、僕に言うことは?」
「あ。ブラックリドル」
「僕に、言うことが、あるはずだけど?」
「そんな強調しなくても…。うーん…ええと、存在忘れててごぺんなさい」
「久しぶりに殺意が湧いたよ」ほんとだ、青筋浮かんでる
リドルはため息を吐くと、嘆かんばかりに首を振った。
「まったく。脳細胞の少ない奴って本当に疲れる」
「とても心外だ」
「君が中々戻ってこないから、僕はてっきりのたれ死んだものと」
「勝手に殺さないでくれる!?…けど」
心配して 来てくれたのかな。
これをリドルに言ったらきっと鼻で笑われて、私の貧相な(あ…自分で言っちゃった)頭じゃ到底想像もつかないような皮肉を投げつけてくるに違いない。だから心の中で勝手にそういうことにしておく。
「リ、リドル、あの」
「何」
「むかえにきてくれて、ありがとう」
つっかえつっかえそう告げるが、隣を歩いていたリドルは視線を前に向けたままだ。…アレ?シカト?何これ悲しいんですけど。
無言のダメージに打ちひしがれていると、リドルは唐突に「どういたしまして」と口にした。かなりぶっきらぼうだったが、あの神々しい似非スマイルで言われるより断然マシだと思った。
もしかしたらリドルは、実は本当に優しい面もあるのかも知れない。
「国宝級に価値のある僕の時間を君なんかの為に割いてあげたんだ。もっと有難がっても良いと思うけどね」
あ、やっぱさっきの訂正で。
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