私の事を驚き、いや驚愕の表情で見つめた上に指までさして、口をパクパクしているのはジェレミーだ。ジェレミーは近所に住んでいる女の子で、隣町の大きなお嬢様学校に通っている私の親友だ。うん。


「ねえジェレミー。この汽車って、どこに向かってるんだっけ?」
「え!?」

突然の私の問いかけにジェレミーはしどろもどろになりながら答える。

「ホ、ホグワーツよ?」
「うんそうだよね。ホグワーツって、どんな所だっけ」
「魔法を教えるところよ…?」
「うんうん。…てことは、つまり」

「ジェレミーって」
「ナマエって」

魔法使いだったの!?二人揃って上げた大声に、近くのコンパートメントから顔を出した何人かの生徒さんにお叱りを受けてしまった。「あ・サーセン」と頭を下げる私の腕を引っ張って、ジェレミーは少し先のコンパートメントに入る。
先に中に居た何人かの女の子は不思議そうにこちらを見ているが、そんな視線も厭わないジェレミーは私の両肩を掴み、再び問いかけた。


「あなた…魔女なの?」
「らしい」
「待って、何で、一体…どういうこと!?らしいって!?」
「あ、あの」
「ナマエが魔女?そんな筈無いわ!」
「(それさっきも言われた)」
「だってあなた私がこの前の休暇で戻った時必死で家中の白アリ追い回してたじゃない!」
「え!何それどこで判断してんのちょっと!」
「私あの時ほど自分が魔法使えて良かったと実感した事なかったのよ!?」
「関係ないよね!?」
「関係あるわよ。魔法使えたら白アリなんて一掃できるもの」
「何それズルい!私があの作業に何時間かけたと…」

ハッ!話が逸れてしまった。

「それよりジェレミー!隣町のお嬢様学校だって、前に」
「…ごめんね、あれは嘘よ」
「う、うううそ!?」

やばいよ私学校のみんなに「私の親友隣町のお嬢様学校に通ってるんだぜどうだ凄いだろエッヘン」とかハッタリほざいちゃったよ。どうしてくれるんだ。


「それについては無暗に人の個人情報バラまいてる貴女が悪いわ」
「うっ!」
「それより早く。説明してちょうだい」
「う、うん…着替えながらでいい?」
「ええ」


私はさっきリドルにしたように、自分の身の上に起こった事をジェレミー(と彼女の友達らしきコンパートメント内の二人)に説明した。ジェレミーはやはり信じられないようで口をあんぐり開けて聞いていたし、ジェレミーの友達二人は「そんな事ってあるのねー」「ホグワーツの編入生なんて聞いたことなかったものねぇ」なんてのんびり話し合っていた。



「私…大丈夫なのかな」ジェレミーに会って緊張が緩んだのか、ふとそんな疑問が口をついて出てしまった。顔を上げたジェレミーが不思議そうに目を丸くしたので、私は慌てて付け足した。

「だ、だって魔法なんて使ったことないんだよ?」
「ナマエ…」
「…ちょっとだけ不安だよ。っと、わ!…ジェレミー?」
「ばかねぇ」

ぎゅっと抱きしめられた。子供に語りかけるような優しい声色で、ジェレミーは囁く。

「ダンブルドア先生は偉大な方よ。あの人がそう言ったなら、信じて間違いないと思うわ」
「…ほんとう?」
「ええ。」

ジェレミーがそう言うならたぶんそうなのだろう。私は気持ちを切り替えて、彼女に微笑みかけた。

「分かった。…私、頑張ってみる!」
「ナマエ」
「ん?」

「あなたが魔法使いだろうと、マグルだろうと、私はあなたの親友よ。…それだけは忘れないで」



優しいジェレミー。わたしは彼女のこんなところが 大好きなのだ。

「うん、ありがとう、ジェレミー」
「…あなたが辛気臭い顔してると、落ち着かないわ」
「そうだよね。元気いっぱいな私がジェレミーは大好きだものね」
「自分で言ってれば世話ないわ。ほんと、バカなんだから」
「なにそれデレツン?」


微笑ましい会話が交わされていると、コンコンとドアがノックされた。振り返ると大魔王が降臨していた。一瞬にして私の幸せメモリーが崩れ去ったのは言うまでもない。


(やあ。遅かったから迎えに来たよ)
top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -