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「そんなこんなでシャボンディ諸島最高だったー。もっかい行きたい」
「二度と行くか」

キッドさんから貰った指輪は、さっそく左手の薬指に付け替えて全員に自慢した。中には泣いて喜んでくれた人もいた。自分で買ったんだろという奴もいた。首輪代わりだな、とドンピシャ言い当てたのはキラーさんである。



「おい、もういい加減離れろ」
「……困ったことになり申した」

キッドさんの自室で身支度をする彼に抱きついてみた。するとなんてこった、拒否られなかったのである。抱き返されもしなかったけど。

「テメェ鼻血出してんじゃねぇだろうな」
「鼻血は出てないです辛うじて。ただ、ちょ……離れられない。身体が言うことききません」
「力ずくで離してやろうか」
「お願いします。」

……

いつまで経っても力ずくで引き剥がさないキッドさん。もうやだー何これ好きがとまらなーい。

「私のことはアクセサリーだと思ってください」
「邪魔くせェいらねぇ」
「……私実はトビトビの実じゃなくて、ペトペトの実を食べたむぎゅむぎゅ人間なんです。1日10時間ぎゅーし続けないと爆発します」
「爆発しろ」
「あーーーむりーー!!キッドさんお願いですからあとちょっとこうさせててください……そのうち何かこう氷山的なのにぶつかってうっかり離れるかもしれない可能性が1ミクロンくらいは…」
「なまえ」


キッドさんは私の後頭部を抑えると、つむじの辺りにキスを落とした。
思いがけないプレゼントに呼吸を忘れる。
まるで熱が巡るのが見えそうなほど、つむじから足の先に向かってじわじわと赤くなった。

いつもならもうとっくに逃げ出していたと思う。

嬉しすぎる出来事は、その思い出があたたかいうちに自室へ持って帰って抱きしめて何度も何度も思い返して幸せに浸る。これがなまえ式の幸せの味わい方なのだったが……

「き、ドさん……」

今日は、少しだけ違った。

身体を離して、キッドさんのコートを両手で握りしめたまま彼を見た。全身情けないくらい真っ赤なのは承知の上だ。

「あ、……の……く、

く……口にも、し、してください……!」


今日の私は、いつもよりちょっと欲張りなのだった。


ドンドンドンッ、バタン!!
「キッドの頭!!大変です、二時の方角に海軍の軍艦…が……」
「……」

光の速さで出ていったヒートさんを、血の涙を流しながら追いかける。許さん……もう誰ひとり許さん……せっかく、よ、ようやく、……ッッ


「あとちょっとでキッドさんにキスして貰えそうだったのにいいいい!!!」

「す、すまねーー!!マジすまねェ頭ーーー!!」

バタバタと遠のいていく足音を聞きながら、キッドは小さくため息をついた。

( テメェが出てかなきゃ、ちゃんとしてやったっつーの )

馬鹿な野郎だ。一人呟きながら、今頃甲板で大暴れしているであろうそいつを思って笑みを零す。
……戦闘で少しでも役に立ったら考えてやるか。
そんなふうに思う程度には、必死で初々しい彼女のことをキッドは愛しく思うのだった。

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