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「そろそろ日も落ちるな。このへんにしとくか」
「つ、つかれたぁ……」

なぜか気付いたときには険悪になっていたキッドさんとトラファルガー。
まあ海賊同士とはいえ、敵同士の船長が二人揃うとこう、ピリピリしてしまうのも仕方がないのだろう。ただ、私を間にはさんでバチバチするのはやめてほしかった。


しかし、この謎のWデートもようやく終わりそうだ。キッドさんとは今度改めてデートに行こうそうしよう。

「それじゃあユースタス屋、これをお前に」
「……気持ちわりィな」
「ちょっとキッドさん!!愛しの私の腕に気持ち悪いってそれはちょっとぐえっ」
「こっちはまだ暫く借りてくぞ」
「あ?」「えっ」

「Room」

青いサークルに囲まれたかと思うと、私とトラファルガーは別の場所に立っていた。街外れの海岸のようだ。「やばい」私の第一声はこれである。
「キッドさんにぶちころされる…!」
「されるか。誘拐されたくらいで喚くな」
「今こそ喚くべき状況だよ…」

ワープしたくても肝心の右手がない。
私は途方に暮れてトラファルガーを見た。


「どうしてこんなこと……」
「知りたいか」

トラファルガーが不敵に笑う。一歩、また一歩と距離を縮められ、私はいよいよ真剣に身の危険を感じ始めた。

「なあ………どうする。もしオレが本気でお前を欲しいと言ったら」
「お断りする」
「食い気味で断るな」
「だってキッドさんから離れたら私生きていけないから」
「揺るがねぇな」

くつくつとトラファルガーは笑った。
距離の近さは相変わらずだったが、私に断られてもなんてことなさそうなところを見ると、やはりからかっていたのだと分かる。

「あいつのどこがそんなに良いんだ」
「出会い編・恋人未満編・恋人以降編、ラブコン編と四部作でお届けしてもいい?」
「良いわけねぇだろ」
「だってそんなの絞れないもん」
「じゃあ、俺とあいつの違いは何だ」
「私を見つけてくれたこと」

間髪入れずに返した答えに、トラファルガーは一度目を見開いた。

「キッドさんが私を見つけてくれた、あの日からなの」

生きてるって感じたのも。
生きたいと思ったのも。

私は右手で近くにあるものをまさぐって、何かを掴んだ。金属の腕輪が指先に触れる。筋肉質な腕、骨ばって大きな、私の大好きなキッドさんの手だ。
手をにぎにぎしていると、キッドさんが私の人差し指を立てた。

「描け」

そう言われたのが分かった。

「じゃあね、トラファルガー」


今日はちょっと楽しかったけど、今度会ったら敵だからね!
それだけ言い残して、現れた円の中に飛び込んだ。

最後にちらりと見えたトラファルガーは、やはり少し笑っていた気がした。

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