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「キラーさん!こ、こんなに躍起になってなまえさんを探さなくてもいいんじゃないですか!?」
「どういう意味だ」
「あの人なら自分の能力でキッドの頭んとこに戻ってくるんじゃ」
「10分だ」

小言を漏らした新米クルーは、新米ゆえにことの重大さを把握しきれずにいるらしい。彼の発言の軽率さを咎めるために、キラーは声色を低くして脅すように告げた。

「あいつがキッドから10分も離れてられる思うか」
「そ、それは…」
「それにこの諸島は賞金稼ぎや海軍のうろつく治安の悪い島だ。まず間違いなく、なまえは何かしらの事件に巻き込まれたと思っていい」
「そんな…!!」
血相を変えて捜索を再開したクルーから目を離して、キラーは思わず深いため息を落とす。
「あのトラブルメーカーめ…」









私はシャボンディ諸島ショッピング街にて、潜りこんだ路地裏のごみ箱の影に身を縮めていた。目線は、両腕を拘束する海楼石の手錠だ。

「アンビリーバボゥ」

事のあらましを簡潔にお伝えすると、キッドさん達とはぐれて数分後、私は賞金稼ぎと名乗る男達に遭遇し、二の句の告げる間もなくこの錠をかけられてしまった。
彼らが私を、海軍に売るかオークションに売るかを検討している間に、キッドさんの船で養ったちっぽけな体術を駆使して逃げ出してきた次第である。


「困った」
海楼石にお世話になるのはこれで二度目だが、当然のように能力は使えない。頬に伝う冷や汗は、お怒りキッドさんに再会した後の事を思ってだ。

「キッドさん怒ってるだろうなぁ……」
「88%だ」
「……はぎゃ――――!!」

なんということでしょう!!!

「あ、あなあなたいつからそこに」
「お前が現れるより前からだ」
何やらお手製と思しき樽椅子に腰かけて、カードを見つめている男の人。こんなところで一人トランプってことは、もしかしてかなり友達いないのかな。


「……あたし、大富豪しかやり方知らないんですけど」
「誰もトランプの相手を探しているとは言っていない。殺すぞ」
「うお、び、ビックリした」
まさかこんな麗しげなお兄さんの口から殺すぞとか物騒な単語が飛び出してくるとは思わなかった。
まあ物騒な扱いには慣れてるからそこまでビビらないけど。


「詫びよう。先程のは誤算だった」
「え?」
「97%だ」
「……何が?」
「お前がユースタス・キッドに殴られる確率が、だ」

すっと頭をよぎった手配書。
この人物が誰なのか認識した私は、光の速さで路地裏を飛び出した。
思い出したのだ。
キッドと船で交わした約束を…―――


『いいか、なまえ。あの諸島にはゴロツキがうじゃうじゃいやがる。売られた喧嘩は俺が買う。テメェは一切手出しするな』
『はぁん、かっけえ。キッドの頭って呼んでもいいですか』
『好きにしろ』
『キッドさん!大好き!!!』
『呼ばねェのかよ!!――ッチ、特にこいつらには関わるな。いいな』

で、覚えさせられた10人の手配書。
あの男は間違いない。

「魔術師、バジル・ホーキンスだ!」

あ、あっぶね、これ以上キッドさんのお怒り買うわけにはいかないもんね。
ていうか私殴られるの?あんな高確率で?え、うそでしょ

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