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「あ、あなた野蛮ね。……見てこれ、地面に穴が開いちゃった」
「いいからサリーを元に戻して!!(やっべ張り切り過ぎたっ…足めりこんだ!抜けない!)」

上空からの華麗なる踵落としをお見舞いした私だが、ギリギリのところで躱されて、逆に足が地面にめり込んでしまったのだ。
とりあえず。エドワードはなんとかサリーの腕を逃れたらしい、と視界の端に確認できた。


「まずは足を抜いたら?」
「テメェちょっと待っとけ妖怪色ボケ女」

んー!んー!と必死に足を抜いていれば、白い、絹糸のような美しい髪が私の頬にかかった。細い指先に顎を持ち上げられる。


「私の目をごらんなさい。――楽にしてあげる」

マヒマヒの実。
麻痺人間。
能力にかかったら終わりだ…!

私はぎゅっと目を閉じて、腰に差してあったナイフを振り回した。策を練らなきゃ…。当てずっぽうでは勝てない。

「うおっ!」
「え?ああれ!?」
「テメェ危ねェもん振り回してんじゃねェよ!」
目をパッと開くと、すぐ目の前にキッドさんが居た。あ、あれえ?

「キッドさん!?何でそこに…さっきまでもっと向こうにいたのに!!」
「こっちも戦ってんだ!ずっと同じ位置に突っ立ってるわけねェだろうが」
「知ってますよ!あたしがキッドさんの位置把握できてないわけないじゃないの!……ほんとに、10秒前くらいまで意識できてたのに」

ふふ、と、壁に寄り掛かってこちらを伺っていた女が微笑んだ。
――そうか!!


「キッドさん。……私、距離感麻痺ったみたい」
「あ?」
「……私とキッドさんの距離、今どのくらいですか?」

キッドさんが怪訝そうに眉をしかめるのが辛うじてわかる。

「どのくらいって…30センチくらいじゃねェか?」
「やっぱり…!すぐ傍で腰砕けときめきボイスが聞こえるのに、私の目にはキッドさんが10メートル位離れて見えてるんですよーう!!なううう!」
「!!!」
「どうしよう!ぱねぇ!攻撃できませんコレじゃ」
「……チッ」
「ほあっ」


急に視界が暗くなり、身体を持ち上げられる感覚。鼻腔をかすめた香りと頬にあたるコートのふわふわでキッドさんを認識した。この距離になるともうさすがに距離感も何もないから良いんだけど…。
「………踏ん張れ私の鼻!!今は血なんてたらしてる場合じゃないんだよ!?」
「ここにきてようやく自制を覚えたか。まあ血は出てるけどな」
「だってキッドさん近い。ときめきが収まらない」

ドゴォン、ガシャアンと壁だか何かの壊れる音が続いているから、多分キッドさんは私を抱えながらジェイダーの攻撃をかわしているのだろう。



「どうした、ユースタス・キッド…!逃げてばかりでは俺を倒す事など敵わんぞ」
「るせぇな、おいなまえ!」
「あい!!」
「テメェ俺の荷物になるくらいなら穴ン中入っとけ!!」
「ひどい!でもごもっともだ!」

私は泣きながら右手で円をかき、キッドさんは私をその中へ放りこんだ。

――トビトビの瞬間場所移動(スペースワープ)!

次に私が姿を現した場所は、客席の真上だった。

「ほぶっ」
(何だ!人が急に降ってきたぞ!!)
(こ、この子は確かユースタス・キッドの……っ)

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