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「くっそぉぉぉ………あれ」

客席に落下した私は数人を下敷きにしたものの、さっきのように視界がぐらついたりはしなかった。これはもしかして、あの女の能力が解けたってこと?
サークル状に人のはけた中心部で、とりあえず一番近くにいたお兄さんに尋ねる。


「ねえお兄さん、私と君との距離何センチ?」
「は?」
「いくよ、せーの!」

「50センチ!」」
よし、ハモった!これで能力解除は決定付けられたわけだけど。――面倒臭いな、あの女の能力。



――ドォォン


軽い地響き。私は客席から身を乗り出して、ドーム内の迷路に目を移した。煙が立ち上っている。たぶん、キッドさんの居るのはあの場所だ。迷路の中心付近なので、円形になっている客先からは結果的に一番見えにくい場所だ。

「ていうかやっぱ映像伝電虫仕事してないじゃん!!」
大型画面は砂嵐。
くっそぉ…私達の戦闘シーンはやっぱり全国放送されてなかったか。されてたらダビングして焼き増ししたかったのに。

「どうやら画面の故障らしい」
「それより、嬢ちゃん……なんでこんな所にいるんだ!?」
「ま、まさか……悪魔の実の能力を?」
「使ったら即失格だぞ!!審判に言いつけてやる!」

最期のは観客に混じった、脱落したエントリー者らしい。私、カッチーン。



「失格?退場?――――上等だボケェ!!!」
再び爆音。


「あたしは今ね、愛しいマイダーリンを置いて自分だけ安全なところにいるわけ!あそこにいたら、キッドさんの戦闘の邪魔になるからここにいるわけ!!ホントは身を呈してあの人を守りたいけど、キッドさんはそんなことしても喜んでくれないから!悔しいけど一人でここにいる!!」

まくしたてれば、静かになる客席。
私は右手で作った四角い穴の中から、とっておきのナイフを取り出して腰に差し込んだ。


「ということで、めちゃくちゃ苛々してるからこれ以上イラつかせないでね。人殺しとかしたくないから、あたし」


こんだけ言えば誰も何も言ってこないだろう。というか寄ってこないはず。
この隙に対策方法考えなくちゃ。
……ごめんね、キッドさん。海賊団の評判悪くしちゃったかも
(というか…自分が情けなくて涙でそう)

すん、と鼻を啜った時、控えめに私の袖が引っ張られた。

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