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「晩餐ってあなた、まだお昼だよ?」というツッコミは心の中だけにとどめておいて、私はキッドさんの少し前に立った。

「キッドさん。私のわがままでこんな面倒事になってごめんね」
「あ?」
「だから、ここは私に任せへぶっ」
キッドさんの手に後ろから顔を覆われて、ぐっと下げられた。

「退いてろ」


のいてろ、の低い声には間違えなく愉悦の色も混ざっていて、余計なお世話だったかと考えを改めた。それにしたって惚れるわ。なんなのこのイケメン。



「ジェイダー・クラウン。てめぇの目的は何だ―――なんて面倒臭ぇことを聞く気はさらさらねェよ」
「……ほう」
「ただ、俺もこのままやられっぱなしでいる気はねェ」
「この俺を殺すと?」
「できねェと思うか」
「フフフ…当然だ。生ぬるい愛に現を抜かすような腑抜け海賊に、負ける道理など無い」
「やいこらジェイダー!キッドさんは現も腑も抜けてないぞ!むしろ五臓六腑から溢れ出す色気も」
「引っ込め。テメェがいると空気が緩んで仕方無ぇ」

抗議の声を上げかけた時、ガラ、っと瓦礫が崩れてエドワードが上体を起こした。

「ぐっ」
「あああ!!!エドワード…!」

駆け寄って様子を伺えば、血は出ているものの彼を死に至らしめる程の大怪我ではないようだった。


「大丈夫?エドワード」
「お前……詐欺師、なぜ…」
「天使な!キッドさんが恐るべき推理力でここを突き止めたと言うか」
「……サリー!!サリーは…!?」

エドワードはサリーの姿を視界に捉えると、瓦礫を押しのけて立ち上がった。よろめきながらも、確かな足取りでサリーに向かって歩いていく。

「……サ、リー!」


サリーは変わらず棒立ちのまま、かと思いきや、ふらりと前のめりになってエドワードの胸に倒れ込んだ。しかし次の瞬間、サリーは自分を抱きしめるエドワードの首を両手で掴んで持ち上げたのだ。
「サ、ッ」
サリーの目から絶え間なく流れ続ける細い涙を見て、私は意識をジェイダーの奥にいるあの女へと向けた。

「―――サリーを操っているの?」
頷く女。
私は、キッドさんを仰ぎ見た。

「……好きにしろ。」

指先で大きな円を描いて飛びこむ。
次に私が姿を見せたのは、あの女の真上だった。

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